男性で不妊になりやすい人の特徴とは?原因や治療方法を解説
「不妊の原因は女性である」と思っている人もいるでしょう。
ですが、不妊は女性だけでなく男性に原因があるケースもあります。
不妊の原因が男性にある場合は当然、男性の治療が必要不可欠となります。
そのため、自身が不妊であるのかを把握して適切な治療を行うことが大切です。
本記事では、男性不妊になりやすい人の特徴や原因、治療方法について詳しく解説します。
そもそも不妊で悩む人はどのくらいいるの?
そもそも不妊で悩む人は多いのか気になる人もいるでしょう。
WHOの報告では、成人人口の約17.5 %(世界の約6人に1人)が不妊を経験しているといわれています。
この結果から不妊は決して稀な事例ではなく、多くの人が悩んでいる問題といっても過言ではありません。
また、不妊は女性に原因があると思われがちですが、男性に原因があることも珍しくありません。
WHOの報告によると、不妊症になる原因の割合は以下の通りです。
- 女性に原因がある:41%
- 男性に原因がある:24%
- 女性と男性の双方に原因がある:24%
- 原因不明:11%
「男性に原因がある」と「女性と男性の双方に原因がある」を合わせると、約半数を占めることがわかります。
そのため、不妊の原因は女性だけの問題ではなく男性の問題であることも多いです。
男性不妊の原因とは?
男性不妊の主な原因として「造精機能障害」「精路通期障害」「性機能障害」のいずれかが考えられます。
ここからは、それぞれの原因について見ていきましょう。
造精機能障害
造精機能障害は、精巣の異常によって正常な精子が生成されない状態になることです。
その結果、そもそも精子が生成されない状態になっていたり、精子が作られる数が非常に少なかったり、精子の運動率が低く妊娠させる能力が著しく低下していたりします。
正常に精子が生成されているか否かは、造精機能の数値によって判断できます。
以下のWHOによる平均的な造精機能の数値を確認しましょう。
- 精子量:1.4ml以上
- 精子濃度:1600万/ml
- 総運動率:42%以上
- 正常精子形態率:4%以上
上記の数値を下回る場合、造精機能に何らかの障害が起きている可能性があります。
精液に含まれる精子濃度が低いケースは乏精子症ともいわれ、原因がわからない場合がほとんどです。
なお、造精機能は泌尿器科もしくは不妊症外来で検査できます。
精路通過障害
精路通過障害は、精子の通り道に異常が起きている状態のことです。
精巣が正常に働いて精子が生成されていたとしても、精子の通り道に異常があれば精液に精子が排出されなくなります。
なお精液に精子が存在しないと認められた場合、無精子症と診断されるのが一般的です。
不妊症の男性の約10人に1人が無精子症と診断されており、妊娠が困難な状態になっています。
無精子症のなかでもよくある症状の1つとして挙げられるのが閉塞性無精子症です。
閉塞性無精子症を発症すると、精路が欠損または閉塞し精子が排出されなくなります。
また精管が塞がっている状態は精管閉鎖と呼ばれ、この場合も精子が精液に排出されることはありません。
精路に異常が起きる原因として、生まれつきの精管欠損のほか鼠径ヘルニアやパイプカットの手術、精巣上体炎などが挙げられます。
性機能障害
性機能障害は、射精障害と勃起障害の2種類に分けられます。
射精障害はさらに膣内射精障害と逆行性射精障害に分類されます。
膣内射精障害とはマスターベーションでは射精ができても、膣に挿入した際に射精ができない状態のことです。
原因としては、不適切なマスターベーションや不妊治療中のプレッシャーなどが挙げられます。
一方の逆行性射精障害は内尿道口が開いたままになることです。
尿道ではなく膀胱に精液が逆流してしまいます。
射精をした感覚があっても、精液の量が少なかったりでなかったりするのが主な症状です。
はっきりとした原因は解明されていませんが、前立腺の手術や糖尿病が要因になるといわれています。
また勃起障害は、勃起しないもしくは勃起を保てない状態のことです。
さまざまな原因がありますが、多くの場合は心理的な問題が影響を及ぼしていると考えられています。
例えば、性行為に関する過去のトラウマや妊活に対するプレッシャーにより、障害が起きる場合があります。
男性不妊になりやすい人の特徴
男性不妊になりやすい人には、いくつかの特徴があります。
ここでは、「見た目」「病歴・手術歴」「生活習慣・生活環境」の3項目に分けて男性不妊になりやすい人の特徴を紹介します。
該当する特徴がある場合は、必要に応じて検査を検討するようにしてください。
1.見た目
男性不妊になる人の見た目の特徴は、睾丸にあらわれます。
睾丸に異常点があると、正常な精子の生成が困難になります。
具体的には、以下のような睾丸の見た目が男性不妊になる人の特徴です。
- 通常より睾丸が小さめ
- 思春期と比べて睾丸が小さくなった
- 睾丸にハリがなく、フニャフニャとした状態
- 睾丸の袋(陰嚢)の表面に血管が多数ある
- 睾丸の袋の上方や鼡径部に睾丸がある
睾丸の袋の表面に血管が多くある場合は、精索静脈瘤が疑われるでしょう。
精索静脈瘤とは、静脈が逆流・滞留している状態のことです。
精子は温度が低い方が生成されやすいといわれているため、睾丸の上部に血管があると温度を低く保てず、精子が生成されづらくなります。
睾丸の袋の上方や鼡径部に睾丸がある場合も温度が高くなりやすく、精子を生成する機能が衰えるリスクがあるでしょう。
2.病歴・手術歴
過去に経験した病気や手術によっても不妊になる場合があります。
主な特徴は、以下の通りです。
- 幼い頃に鼡径ヘルニア手術の経験がある
- おたふく風邪にかかり、精巣炎によって睾丸が腫れたことがある
- 高い熱がでたときに睾丸の付近に痛みを感じたことがある
- 放射線治療や抗がん剤治療の経験がある
精子は鼡径管を通るため、鼡径ヘルニア手術で鼡径部にダメージが加わると不妊の原因になる可能性があります。
また、睾丸の炎症などによって精子を生成する細胞が死滅し、不妊になるケースもあるでしょう。
3.生活習慣・生活環境
生活習慣や生活環境によって男性不妊となる人の特徴は、以下の通りです。
- 日常的にタバコを吸っている
- お酒を過度に飲むことが多い
- 調理など火を扱う仕事をしている
- 頻繁に長風呂やサウナを楽しんでいる
- 膝の上でパソコンを使うことが多い
- 自転車やバイク、自動車を長時間運転することが多い
- タイトなズボンや下着を着用することが多い
- BMIが25以上で肥満体型になっている
- BMIが18.5未満でやせ過ぎになっている
睾丸は温度が高くなると精子が生成されにくくなるため、長風呂やサウナなどで体を温める機会が多いと不妊の原因になる可能性があります。
男性不妊の治療方法
男性不妊は、治療によって改善する可能性があります。
どのような治療があるのかを知り適切な対処を行うことが大切です。
ここでは、3つの治療方法を紹介します。
薬物療法
薬物療法では、体の状態に合わせて適切な薬物を服用する治療方法です。
例えば、勃起障害の場合はシアリスやバイアグラといったED治療薬を服用するのが一般的です。
精子の状態を改善するために、男性ホルモンの分泌を促進する薬を使用する場合もあります。
造精機能に問題があるものの原因がわからない場合は、抗酸化剤やビタミン剤、漢方薬が処方されることもあるでしょう。
薬物療法は体への負担が少ないため、取り入れやすい治療方法といえます。
ただし、効果を感じられるまでに時間がかかる場合がある点には注意が必要です。
人工授精
人工授精とは、事前に採取した精子を排卵時期に合わせて子宮に注入する方法を指します。
一般的な不妊治療を行っても妊娠まで至らない場合や、高齢で妊娠を急ぐ必要がある場合などに検討されることがあるでしょう。
体外受精と比較して体への負担や費用を抑えられます。
体外受精
体外受精とは、取りだした精子と卵子を受精させて子宮に受精卵を戻す方法のことです。
精子の数が少なかったり精子の運動率が低かったりする場合は、顕微鏡を使い1つの精子を卵子に注入する方法が取られることがあります。
ほかの治療で効果を得られない場合などに用いられるのが一般的です。
まとめ
不妊は、女性だけでなく男性にも大きな関係があります。
睾丸の見た目や過去の病歴、生活習慣など気になる点がある場合は検査を検討しましょう。
また、治療法にもさまざまな選択肢があるため、医師と相談しながらどのように対処するか決めるようにしてください。