望まない妊娠を避けるための最終手段!緊急避妊に用いられる「アフターピル」とは?
こちらをご覧の皆さんは、「アフターピル」についてどれほどご存じでしょうか?
「まったく知らない……普通のピルと何が違うの?」
「生でエッチしたあと女性が飲めば妊娠しなくなる薬でしょ?」
そのような方が多いのではないでしょうか。
確かに、アフターピルとは「緊急避妊薬」のことですが、ほかにも使いみちがあります。
また「いつ服用しても効果がある」というわけではなく、タイミングには注意が必要です。
というわけで今回の記事では、アフターピルの基本的な効果や、”普通のピル”との違い、服用の際の注意点などについてまとめました。
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避妊の最後の砦「アフターピル」とは?
アフターピルとは、文字通り性交渉の「アフター(後)」で飲むことで効果を発揮する「ピル(避妊薬)」です。妊娠を望まない人にとって、最後の砦といえます。
まずはその基本的な効果や、いわゆる”普通のピル”である低用量ピルとの違いについて解説します。
アフターピルの効果
アフターピルは「緊急避妊薬」と呼ばれていますが、文字通り緊急的な避妊で用いられる避妊薬です。
通常の避妊では、基本的に使用しません。
つまり、避妊の失敗などで「もしかしたら妊娠したかも!早く何とかしなきゃ!」という場合に有効な避妊薬であり、正しく服用することで不安な状況を解消できます。
適切に使用すれば、ほぼ100%に近い避妊率を誇ります。
アフターピルと低用量ピルとの違い
アフターピルは、上記の通り、避妊の失敗などで緊急的に避妊が必要な場合に服用する避妊薬です。
使用する薬によって飲み方は異なりますが、1~2回の服用で避妊が完了します。
排卵を抑制し、受精卵の着床を防ぐ効果を持つ医薬品です。
一方、低用量ピルは毎日飲み続けることで、飲んでいる間は避妊効果を発揮する薬です。
排卵を抑制し、着床を防ぐほかに、そもそも精子が侵入しないようにする効果もあります。
その他の違いについては、以下の表をご覧ください。
商品名 | ノルレボ | マーベロン |
---|---|---|
種別 | アフターピル | 低用量ピル |
商品イメージ | ![]() | ![]() |
成分(量) | レボノルゲストレル1.5mg | デソゲストレル 0.15 mg エチニルエストラジオール 0.03 mg |
価格 | 1錠あたり 2,626〜5,560円 | 1シートあたり 1,030〜4,960円 |
詳細 |
アフターピルが用いられるケース
緊急避妊薬であるアフターピルを使わなければならない具体的な場面とは、どんなときを指すでしょうか。
ここでは、アフターピルが使われる”よくあるケース”をいくつか紹介します。
避妊具を用いずに膣内射精してしまった場合
いちばんよくあるケースとして考えられるのは、コンドームなどの避妊具を用いずに性交渉を行い、膣内射精をしてしまった場合です。
精子は3日間ほど生き続けるといわれていますが、アフターピルは約5日間に渡って排卵を抑制するため、精子と卵子は出会わず、結果的に妊娠が防がれることになります。
コンドームが破れたり外れたりした場合
性交渉の際、きちんとコンドームを着けていたつもりでも行為の最中に破れてしまったり、男性器から外れてしまったりする、ことがあります。
射精後に気づいた場合、精子が膣内に入り込んでいる可能性があるため、アフターピルを服用する必要があります。
低用量ピルの飲み始めや飲み忘れた場合
- 避妊のために低用量ピルを飲み始めたばかり
- 低用量ピルは毎日飲まなければいけないのに忘れてしまった
そんなタイミングで性交渉をする場合、避妊効果が低いか低下している可能性があるため、望まない妊娠に至る恐れがあります。
このような場合の妊娠対策としても、アフターピルは活用できます。
性暴力の被害にあった場合
アフターピルが使われるケースとしては、ここまで取り上げたような「避妊の失敗」が多いです。
しかし、性暴力の被害や、同意なく意思に反して行われた性交渉の際に使われることもあります。
被害に遭ったときはショックでなかなか動けないかと思いますが、望まない妊娠を避けるためには早めの行動が欠かせません。
アフターピルは大きく分けて3種類ある
アフターピルは、飲み方に応じて大きく3種類に分けることができます。
それぞれの飲み方で使われる薬の種類や、具体的な飲み方について見てみましょう。
なお、アフターピルの種類について、より詳しくはこちらの記事でまとめています。
ノルレボ法
レボノルゲストレルを有効成分とするアフターピル「ノルレボ」を服用する方法です。
性交渉の後72時間(最大120時間)以内に、ノルレボ1錠を飲みます。
1回1錠で済むというメリットの他に、避妊率が高く、副作用のリスクが低いという点もメリットとして挙げられます。
具体的には、避妊率は72時間以内の服用で97~99%となっています。
また副作用が現れる確率については、
- 吐き気:約9%
- 嘔吐:ほぼ0%
- 頭痛:約12%
となっています。
ヤッペ法
ヤッペ法は、ノルレボが登場する以前からあった緊急避妊の方法で、アフターピルではなく「中用量ピル」を用いるのが特徴です。
ノルゲストレル、エチニルエストラジオールを有効成分とする「プラノバール」を使用するのが一般的で、
- 性交渉の72時間以内に2錠を飲む
- さらに12時間後に2錠飲む
といった方法で服用します。
そんなヤッペ法は、ノルレボ法に比べると効果が低く、副作用のリスクが高いという特徴があります。
避妊率は、72時間以内の開始で57%です。
また副作用のあらわれる確率については、
- 吐き気:最大50%
- 嘔吐:約10%
- 頭痛:約2%
となっています。
参考元:緊急避妊
エラ
2024年現在、日本では未承認となっているアフターピル「エラ」を服用する方法です。
エラはウリプリスタールを有効成分とするアフターピルで、避妊率は約98%とかなり高くなっています。
また、服用回数は1回1錠のみ。副作用のリスクは低いというメリットがあります。
さらに、ノルレボ法やヤッペ法は「性交渉後72時間以内に飲むのが望ましい」とされていますが、その一方で、エラは「120時間以内に飲めば十分な効果を発揮する」とされています。
アフターピルの服用に関する注意点はさまざま
アフターピルは、ノルレボ法やエラなら1回1錠を飲むだけで完了します。
要するに”手軽に飲める医薬品”であるわけですが、服用するにあたってはさまざまな注意点を押さえておく必要があります。
特に注意すべきポイントを以下にまとめてみたので、チェックしてみてください。
避妊失敗からの時間が重要
アフターピルは、避妊の失敗が発覚してからなるべく早く飲む必要があります。
時間が経過すればするほど避妊率は下がってしまうため、注意が必要です。
具体的な経過時間と避妊率については、以下の表をご覧ください。
【ノルレボの場合】
性交渉後の時間 | 避妊率 |
---|---|
24時間以内 | 約99% |
24~72時間 | 97~98% |
72~96時間 | 約75% |
こうして見ると、72時間を超えると避妊率はガクッと下がることがわかります。
つまり、72時間=3日以内に飲むのが望ましく、さらに高い効果を求めるのであれば24時間=1日以内に飲むのが望ましいといえます。
ただし、日本では未承認のアフターピル「エラ」の場合、120時間=5日以内の服用でも90%以上の高い避妊率を発揮します。
日にちが経過しすぎてしまった場合には検討してみることをおすすめします。
医薬品であるため、副作用リスクがある
アフターピルは、医薬品であるからには、望む結果をもたらす作用の他に副作用のリスクも考えられます。
また、特に中用量ピルを2回に分けて飲むヤッペ法は、低用量ピルを普段から飲むよりも副作用の現れる確率が高いといえます。
ただし、同じアフターピルでもノルレボ法はヤッペ法ほど高くありません。
詳しくは、以下の表をご覧ください。
低用量ピル | アフターピル (ヤッぺ法) | アフターピル (ノルレボ法) | |
---|---|---|---|
吐き気 | 約5% | 30~50% | 約9% |
嘔吐 | 約5% | 約10% | ほぼ0% |
頭痛 | 約5% | 約2% | 約12% |
なお、アフターピルの副作用について詳しくは「【要確認】アフターピルで気を付けるべき副作用を徹底解説!」でまとめているので、あわせてチェックしてみてください。
連続での使用はできない
「アフターピルを飲めば妊娠を防げるなら、避妊なしで毎日セックスできるってこと?」と思われるかもしれませんが、アフターピルは連続で使用できません。
1回の使用でさえ女性の体に大きな負担をかけることになるため、連続使用は推奨されていません。
カップル間で性交渉が頻繁にあるなら、
- 毎回きちんとコンドームを使う
- 低用量ピルを毎日飲む
といった方法で避妊していきましょう。
性感染症の予防効果はない
おそらく「生でセックスしてもアフターピルがあれば大丈夫」というところから誤解する人が出るのだろうと思われますが、確かに望まない妊娠を防ぐ効果はあるものの、アフターピルで性感染症は予防できません。
性感染症を予防するには、
- 男性がコンドームを装着する
- そもそも感染が疑われる相手とは性交渉をしない
といった対策が不可欠です。
服用後は避妊なしの性交渉を避ける
アフターピルを1回飲めば一時的に避妊率は上がりますが、排卵のタイミングが変わるため、効果が切れた直後はむしろ妊娠しやすくなる可能性があります。
つまり、アフターピル服用後の性交渉については、避妊効果はありません。
- 妊娠していないことが発覚するまでは性交渉を避ける
- 性交渉をする場合はコンドームをきちんと使用する
といったことを心がけましょう。
アフターピルを手に入れる手段は3通り
ここでは、アフターピルを手に入れる手段について解説します。
- 病院で処方してもらう
- ネット通販で注文する
- 薬局で購入する
といった方法がありますが、それぞれ少し詳しく見てみましょう。
ちなみに、アフターピルをどこで買えるのかについて、より詳しくは「緊急避妊が必要になる前に知っておきたいアフターピルの購入場所」でまとめています。
病院で処方してもらう
アフターピルは、産婦人科の病院で処方してもらうことができます。
専門家である医師の診察を受けたうえで、アフターピルをいち早く入手できる点がメリットといえます。
また、近年ではオンライン診療に対応している病院もあり、病院に行く手間を省くことも可能です(アフターピルを受け取るためには最寄りの薬局などに行く必要があります)。
ただし病院の場合、基本的には平日の診療になるため、タイミングによっては72時間以内に間に合わない可能性があります。
また、アフターピルは基本的に保険適用外の自費診療となるため(場合によっては国の補助を受けられることもあります)、病院によって価格が違う点にも注意が必要です。
ネット通販で注文する
ネット通販で、アフターピルを注文することができます。
正確には、海外で流通するアフターピルを個人輸入という形で取り寄せる方法です。
ネットショッピングをする感覚で便利に購入できるのがメリットですが、海外から届くまでには2週間程度かかるため、「避妊に失敗した後で注文しても遅い」という点は覚えておきましょう。
また上記以外のメリットとしては、海外で流通する安価なジェネリック医薬品を選べることが挙げられます。
ただし一方で、個人輸入をサポートする個人輸入代行サイトの中には悪質なところもあり、粗悪品をつかまされるリスクがある点には注意が必要です。
利用する場合は、信用できる代行サイトを選びましょう。
薬局で購入する
2023年11月、薬局で処方箋なしのアフターピル処方が実験的にスタートしました。
処方箋なし、つまり事前に医師に診てもらわなくても、直接アフターピルを扱っている薬局に行って購入するという方法です。
これまで、「病院に行って話をしなければならない」という壁のためになかなかスムーズにアフターピルを入手できないケースが多かったようですが、この取り組みによって解消される可能性があります。
ただし、あくまでも一部の薬局(2023年11月時点で全国145ヶ所)である点には注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、アフターピルについて解説しました。
アフターピルとは、
- 避妊をしなかった
- 避妊に失敗した
- 性暴力に遭遇した
といった場合、事後に飲めば高い確率で妊娠を防ぐことができる緊急避妊薬です。
病院で入手できる他、最近は処方箋なしで入手できる方法もあります。
また、安価な海外製のアフターピルを個人輸入で取り寄せることも可能です。
ただし、服用にあたっては「72時間以内に飲むのが望ましい」などの注意点は押さえておきましょう。
望まない妊娠を正しく避けるため、参考にしてみてください。