アジーと他の抗生物質の違いは?
アジーは、マクロライド系に分類される抗生物質のアジスロマイシンを有効成分とする医薬品です。
しかし、実はひとくちに「マクロライド系」「抗生物質」といっても種類はさまざま……。
マクロライド系に分類される抗生物質は複数ありますし、マクロライド系以外の系統もあります。
そして、種類が違うと、適用される疾患にも違いが出てきます……。
そこで、こちらのページではアジーと他の抗生物質の違いについてまとめました。
目次 [表示]
同じマクロライド系であるクラリスやエリスロマイシンとの違い
まずは、同じマクロライド系に分類される抗生物質とアジーの違いをまとめてみましょう。
【主なマクロライド系抗生物質の比較表】
薬剤名 | おおよその 効果持続時間 | 第一選択 となる疾患例 | 主な副作用 |
---|---|---|---|
アジー (アジスロマイシン) | 約7日間 | 性器クラミジア、歯周組織炎 | 下痢、腹痛、悪心(吐き気) |
クラリス (クラリスロマイシン) | 約12時間 | ピロリ菌感染症、非定型肺炎(マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ等) | 下痢、味覚異常、悪心(吐き気) |
エリスロマイシン | 約6時間 | ジフテリア、カンピロバクター下痢症、梅毒 | 悪心(吐き気)、腹痛、食欲不振 |
いずれも、細菌の生存・増殖に欠かせないタンパク質合成という働きを阻害することで死滅させ、疾患を治療に導く点では共通しています。
しかし、第一選択となる具体的な細菌や疾患には違いがあります。
たとえば性感染症を引き起こすクラミジアについては、「性器クラミジア」の第一選択薬はアジスロマイシンですが、「クラミジアによる肺炎」はクラリスロマイシンが第一選択となります。
ちなみに、エリスロマイシンの適応症として性感染症の梅毒が挙げられますが、本来、梅毒の第一選択薬はペニシリン系の抗生物質です。
エリスロマイシンが使われるのは、ペニシリンアレルギーがある人に限られます。
また、最近では「ペニシリンアレルギーがある→エリスロマイシンではなくテトラサイクリン系のミノマイシンを選択する」というケースが一般的になっています。
系統別で見る抗生物質の特徴は何?
抗生物質にはアジー(アジスロマイシン)を含むマクロライド系以外にも、ペニシリン系やセフェム系といったさまざまな系統のものがあります。
ここからは、それぞれの特徴を解説します。
ペニシリン系(サワシリン、ビクシリン)
・アモキシシリン(製品名:アモキシシリンカプセル、ノバモックス等)
・アンピシリン(製品名:ビクシリン・ジェネリック等)
これらのペニシリン系の抗生物質には、細菌の細胞壁合成を阻害する作用があります。
中でも、アモキシシリンは肺炎球菌による肺炎や、梅毒トレポネーマによる梅毒といった疾患の第一選択薬となり、広く使われている抗生物質です。
安全性が高く、子どもから高齢者まで幅広く使われるのが特徴ですが、ペニシリンに対してアレルギーがある人には使用できません。
セフェム系(ケフレックス、フロモックス)
・セファレキシン(製品名:セファレキシン(Lupin)、セファデックス等)
・セフカペンピボキシル(製品名:フロモックス)
これらのセフェム系の抗生物質は、ペニシリン系と同じく細菌の細胞壁合成を阻害して死滅させます。
メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)による皮膚感染症などに対しては、セファレキシンが第一選択薬となります。
ペニシリンアレルギーがある方でも使えるのも特徴です。
ニューキノロン系(クラビット、タリビッド)
・レボフロキサシン(製品名:レボフロックス、クラビット・ジェネリック等)
・オフロキサシン(製品名:タリビッド等)
これらのニューキノロン系の抗生物質には、細菌のDNA合成を阻害して増殖を防ぐことで死滅させる作用があります。
適応症は多く、呼吸器系の細菌感染症から性感染症まで、さまざまな分野で活躍します。
たとえばレボフロキサシンは、ペニシリンアレルギーのある高齢者の市中肺炎や、副作用の関係でアジスロマイシンを使いたくない性器クラミジアの患者などに処方されることがあります。
アジーからの乗り換えや選択をするときに外せないポイント
抗生物質は、マクロライド系やペニシリン系など系統がさまざまで、さらに同系統であっても特徴や適応症に違いがあるため、適正な薬を選ぶにはその点を押さえておく必要があります。
たとえば、マクロライド系のアジスロマイシン(アジー)とニューキノロン系のレボフロキサシン(クラビット)は、ともに性感染症のクラミジアに対して有効ですが、服用方法や副作用の特徴は異なります。
服用方法 | 特徴(副作用) | |
---|---|---|
アジー | 1000mgを1回のみ | 比較的、下痢などが起きやすい |
クラビット | 1日1錠500mgを7日間 | 比較的、下痢などが起きにくい |
アジーは1回の服用で済むのがメリットですが、クラビットに比べると下痢になりやすいという特徴があります。
そのあたりのバランスを考え、どちらを選ぶか決める必要があります。
アジーと他の抗生物質との違いを正しく把握して活用しよう
アジーはさまざまな感染症に対して非常に有用な抗生物質ですが、同系統や異系統の薬剤との違いを理解することで、より適切な治療選択が可能になります。
ここでは、今回の記事のポイントを3つに整理して振り返ります。
- アジーはマクロライド系抗生物質で、性器クラミジアや歯周組織炎の第一選択薬
- 他系統(ペニシリン系・セフェム系・ニューキノロン系)は適応疾患や特徴が異なる
- 抗生物質の選択には服用方法や副作用などの特徴を押さえるのが大事
抗生物質は、マクロライド系のアジー(アジスロマイシン)以外にもさまざまな種類があり、それぞれで効果を発揮する感染症は異なります。
適応症や副作用の特徴などを考慮し、最適なものを選びましょう。