アルコールを飲むと関節痛が起こるのはなぜ?対処法や予防方法について

アルコールを飲むと関節痛が起こるのはなぜ?対処法や予防方法についてアルコールを飲んだ後に関節が痛くなった経験はありませんか。
楽しいはずの飲酒が、思わぬ不快感をもたらすことがあります。
なぜお酒を飲むと関節痛が起こるのか、理由が気になる人も多いでしょう。
 
そこでこの記事では、アルコールが関節痛を引き起こすメカニズムや痛みが生じたときの対処法を解説します。
また、予防方法や関節痛予防に効果的な食べ物についても紹介するため、お酒を楽しみつつ健康的な生活を送りたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
アルコールと上手に付き合いながら、快適な日々を過ごすためのヒントが得られるでしょう。

 

アルコールを飲むと関節が痛むのはなぜ?

アルコールを摂取した場合、体内で分解される際に「アセトアルデヒド」という物質が生成され、これが関節痛の原因となることがあります。
このアセトアルデヒドは、アルコールを分解する過程で生成されるもので、アセトアルデヒドが全身の神経を刺激してしまうことで関節の痛みがあらわれることがあります。
動物実験の段階ですが、アセトアルデヒドが痛覚神経を活性化させることが報告されています。

参考元:Bang S,Kim KY,Yoo S,Kim YG,Hwang SW.Transient receptor potential A1 mediates acetaldehyde-evoked pain sensation: Acetaldehyde activates TRPA1. Eur J Neurosci. 2007 Nov;26(9):2516–23.

 
また、アルコールには血行を促進する作用があり、関節部分に炎症が起きていたりすると、血行が良くなることで炎症が悪化してしまい痛みがあらわれることもあります。

参考元:Osna NA et al. Ethanol metabolism in the liver, induction of oxidant stress and alcoholic liver disease. Biomedicines. 2021;9:26-45.

 

アルコールを飲んでいて関節痛が生じたときの対処法

次に、アルコールを飲んで関節痛が生じたときに効果がある2つの対処法を紹介します。
これらの対策を実践することで、不快な症状を和らげられる可能性があります。

 

水分を取る

アルコールには利尿作用があるため、摂取することで体内の水分が失われ脱水状態になりやすくなってしまいます。
実は、この脱水状態が原因で関節痛が悪化する場合があります。
水分が不足してしまうと、アルコールの分解がスムーズに進まず、体内に有害物質であるアセトアルデヒドが残りやすくなってしまいます。
そして、残ったアセトアルデヒドが関節に影響を与え、痛みを引き起こす可能性があります。
 
そのため、関節痛を感じた場合には、まずは十分な水分補給を心がけましょう。
特に、ミネラルウォーターやスポーツドリンクが効果的です。
これらの飲み物は、体内の電解質バランスを整え、脱水症状を防ぐのに役立ちます。
飲酒中や飲んだ後はこまめに水分を補給することで、関節痛の予防にもつながるでしょう。

 

グレープジュースを飲む

アルコールを分解する過程で生成されるアセトアルデヒドの影響を和らげる方法として、グレープジュースを飲むことも効果的です。
グレープジュースに含まれるフルクトース(果糖)はアルコールの分解を助け、体内からアセトアルデヒドを速やかに排出する働きがあります。
こちらも動物実験ですが(*3)、フルクトースによってアルコール(エタノール)の排泄が促進したと報告されています。
これにより、関節痛を引き起こす原因物質が体内に長く留まるのを防止できる可能性があります。

参考元:Holzhütter HG et al. Fructose-dependent acceleration of ethanol metabolism. Curr Metab Rep. 2021;10:305-12.

 
また、グレープジュースを飲むことで肝臓の働きが高めてアルコールの代謝が促進されるため、飲酒後の体調不良を軽減する効果も期待できます。
関節痛が気になる場合は、飲酒後に一杯のグレープジュースを摂取することを習慣づけると良いでしょう。

 

アルコールを飲むと関節が傷む場合の予防方法

アルコールによる関節痛を予防するには、日頃からの心がけが重要です。
ここでは、お酒を楽しみながらも関節の健康を維持するための3つの方法を紹介します。
これらの予防法を実践することで、快適な飲酒習慣を身につけられるでしょう。

 

お酒は飲み過ぎない

アルコールは適量で楽しむことが、関節痛を予防する最も基本となる方法です。
アルコールの過剰摂取は体内の水分とミネラルのバランスを崩し、関節に負担をかける原因となります。
また、肝臓に過度な負担がかかるとアルコールの代謝が遅れてアセトアルデヒドが体内に長く残り、関節痛のリスクが高まります。
 
適切な飲酒量を把握した上で、無理な飲酒を避けることが大切です。
適量の目安は、個人の体格や体質によって異なりますが、一般的に男性なら1日に日本酒1合程度、女性ならその半分とされています。
この量を超えないよう意識することで、関節への負担を軽減できるでしょう。

 

おつまみを食べながらお酒を飲む

アルコールの影響を和らげるために、おつまみを一緒に摂ることも有効です。
こちらの論文では、食後のアルコール摂取によって、空腹時よりもアルコールの吸収が半分程度に抑えられることが報告されています。
逆に言うと、空腹時にアルコールを摂取することは危険とも言えます。
よく「空きっ腹にお酒は回る」と言いますが、研究でも支持されている説ですね。

参考元:Robertson MD et al. Effect of high-fat, protein and carbohydrate meals on ethanol pharmacokinetics. Br J Clin Pharmacol. 1997;44:514-21.

 
特に、油分の多い食べ物は胃腸に留まる時間が長いため、アルコールの吸収を遅らせる働きがあります。
これにより、体内でのアルコール代謝が緩やかになり、関節痛が起きづらくなるのです。
これを意識することで、血中のアルコール濃度が急激に上がるのを防ぎ、関節痛の原因となるアセトアルデヒドの生成も抑えられるでしょう。
おつまみは、チーズやナッツ、アボカドなどの油分を含むものを選ぶことをおすすめします。
 
また、バランスの取れた食事を心がけることで、アルコールによる関節への負担を軽減できます。
お酒を楽しむ際には、おつまみを上手に取り入れ、体への影響を少なくすることが重要です。
ただし、塩分の多いおつまみは水分の排出を抑制し、血圧を高めてしまうため控えめにすることをおすすめします。
バランスの取れたおつまみを選ぶことで、楽しく飲酒しながら関節痛を予防できるでしょう。

 

休肝日を作る

定期的に休肝日を設けることも、アルコールによる関節痛を予防するための効果的な方法です。
休肝日とは、肝臓を休ませるために一切のアルコールを摂取しない日を設定することを指します。
 
肝臓はアルコールを分解したりといった有害物質を解毒する重要な役割を担っていますが、休肝日を設けることで肝臓への負担が軽減され、体内の回復が促進されます。
この回復期により、アセトアルデヒドの蓄積が抑えられ、関節痛のリスクも低減されるでしょう。
理想として週に2日以上の休肝日を設けることが推奨されています。
計画的に休肝日を取り入れ、肝臓と関節を健康に保つことが大切です。
 
休肝日を習慣化することでアルコールへの耐性が下がり、少量のお酒でも満足感を得られるようになる場合もあります。
これは結果的に飲酒量の自然な抑制につながるので関節痛の予防にも寄与します。
健康的な飲酒習慣のために、休肝日を積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

 

関節痛予防に効く食べ物

日々の食生活も、関節痛の予防に重要な役割を果たします。
適切な栄養素を含む食べ物を意識的に摂取することで、関節の健康維持に役立つでしょう。
ここでは、特に効果的な3つの栄養素を含む食品をご紹介します。

 

カルシウムを含む食べ物

カルシウムは骨の主要な構成成分であり、関節の健康維持に欠かせません。
乳製品や小魚、大豆製品などがカルシウムの豊富な食品です。
カルシウムをたくさん摂取すれば骨密度が上がるというほど、簡単な話ではありませんが、少なくともカルシウム不足は骨にマイナスです。
 
強い骨を育むことで関節をしっかりと支えられるようになり、痛みの予防につながるでしょう。
毎日の食事で、これらの食品を意識的に摂取するよう心がけてください。

 

ビタミンD・Kを含む食べ物

ビタミンDとKは、カルシウムの吸収と利用を助ける重要な栄養素です。
ビタミンDは、日光を浴びることで体内にて生成されますが食品からも摂取できます。
魚類やきのこ類、卵黄などに含まれており、ビタミンKは納豆や緑黄色野菜に多く含まれます。
ビタミンDもビタミンKも骨粗鬆症治療薬としても処方されるくらいに大事で、かつ、多くの人が不足している栄養素ですので、意識して摂取したいですね。

 

たんぱく質を含む食べ物

たんぱく質は筋肉や骨、軟骨の形成に不可欠な栄養素です。
肉類や魚類、卵や大豆製品などがたんぱく質の良い供給源となります。
これらの食品を適切に摂取することで筋肉や骨が丈夫になり、姿勢の改善や関節への負担軽減につながるでしょう。
ただし、過剰摂取にならないよう、バランスの取れた食事を心がけることが大事です。

 

まとめ

医者に相談する男性アルコールによる関節痛は、体内でのアセトアルデヒドの生成や血行の促進が主な原因です。
この症状を緩和するには、水分補給やグレープジュースの摂取が効果的でしょう。
予防法としては、適量の飲酒、おつまみを取り入れること、そして定期的な休肝日の設定が挙げられます。
 
また、日頃の食生活も関節の健康維持に重要です。
カルシウムやビタミンD・K、たんぱく質を含む食品を積極的に摂取することも、関節痛の予防に効果があります。
これらの対策を組み合わせることで、お酒を楽しみつつ、関節の健康を維持できるでしょう。
適度な飲酒と健康的な食生活を心がけ、快適な毎日を送ってください。

 

監修者情報

歌島大輔先生

  • 医師

    歌島 大輔

  • 所属・資格等

    フリーランス整形外科医

  • 経歴

    【現役医師】肩関節鏡手術 400件/年
    【日本一の整形外科YouTube】チャンネル登録者21万人
    1981年生/広島出身/茨城育ち
    フリーランス整形外科医として関東圏の病院において連日手術を行う一方、情報発信する医師としてYouTubeなどのSNSや様々なオンライン講座を運営している。現在は多くの医師や士業を対象にYouTubeや出版をはじめとする情報発信・ブランディングを指導している。
    2024年に「肩こり・五十肩・腱板断裂 肩の痛みがよくなるすごい方法」(Gakken)を出版して以降、コンスタントに著書を出版。
    【公式サイト】https://utashima.com/
    【公式YouTube】https://www.youtube.com/@d.utashima