抗うつ剤で「太る」はホント!?抗うつ剤の副作用と対策を知っておこう!
うつ病治療に必要不可欠となるのが「抗うつ剤」です。
無気力なうつ状態を改善するために医師から抗うつ剤の内服を勧められている方の中には、抗うつ剤を服用すると太ってしまうといった噂が気になって、処方どおり服用することを躊躇ってしまう方も少なくありません。
特に、女性の中には自身の体型が気になって治療の一歩を踏み出すことができないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、こちらのページでは抗うつ剤を服用することで太ってしまうのはなぜなのか?そして、その対策について紹介します。
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抗うつ剤を使用すると太るってホント?
そもそも、抗うつ剤を服用することで太ってしまうっていうのはホントの話なのでしょうか?それとも単なる噂なのでしょうか?
実は「抗うつ剤を服用することで太ってしまうことがある」というのはホントのことです。
ただし、抗うつ剤を服用すれば絶対に太るというわけではなく、太りやすくなる方もいるというのが正しい表現です。
では、抗うつ剤を服用するとどうして太りやすくなってしまうのでしょうか?
ここからは抗うつ剤を服用することで太りやすくなる理由について紹介します。
抗うつ剤を使用すると太りやすくなってしまう原因
無気力や不安感などうつ状態を改善する効果をもっている抗うつ剤ですが、服用するとなぜ太りやすくなってしまう場合があるのでしょうか?
抗うつ剤の中には脳内のヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン作用をもつものがあります。
この抗ヒスタミン作用が太りやすくなってしまう原因と考えられています。
通常、ヒスタミンが満腹中枢を刺激することで満腹度が高まり、食欲が抑制されます。
しかし、抗ヒスタミン作用のある抗うつ剤を服用すると、ヒスタミンの働きが抑えられてしまうため、満腹感が高まりにくくなってしまい、その結果として太ってしまう可能性があるのです。
太りやすい抗うつ剤
抗うつ剤にもさまざまな種類があり、化学構造や作用機序によって5つの種類に分けられています。
抗うつ剤の5つの種類
- 三環系抗うつ剤
- 四環系抗うつ剤
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)
- NaSSA(ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ剤)
このうち太ってしまう可能性が高いといわれている抗うつ剤は、NaSSAに分類される「ミルタザピン」です。
ミルタザピンを有効成分にもつ抗うつ剤には「レメロン」や「リフレックス」などがあります。
ミルタザピンを有効成分にもつ抗うつ剤は太ってしまう可能性が高い、と言いましたが、その他の抗うつ剤を服用しても太らないというわけではありません。
三環系抗うつ薬の中にも太りやすくなるものが含まれます。
これらの抗うつ剤に比べるとSSRIやSNRIは比較的太りにくい薬が多いものの、服用量や体との相性によってかなり個人差があります。
抗うつ剤は使用したいけど太りたくないという場合、その旨を担当の医師に必ず相談してください。
抗うつ剤で太らないようにするための4つの対策
抗うつ剤によって太ってしまう可能性があることは事実です。
しかし、たとえ抗うつ剤の服用で太りやすくなってしまったとしても、太ることを抑えて服用前の体型を維持し続けることは可能です。
そのために大事なことは「食生活の見直し」「運動習慣や睡眠習慣の見直し」そして「減薬」と「変薬」です。
1.食生活の見直し
抗うつ剤で太ってしまう原因の一つは代謝の抑制です。
代謝の抑制によって1日の生活の中で消費されるエネルギーが減少してしまい、その結果、食事で摂取したエネルギーを消費しきれずに体内に蓄積されて太ってしまいます。
つまり、そもそも消費しきれるくらいのエネルギーを摂取していれば、体内にエネルギーが蓄積されなくなるため痩せることができます。
しかし、単純に「減らせばいい」というわけではありません。
摂取する量を減らしたがために栄養バランスが悪くなってしまっては意味がありませんし、食事を抜いてしまうのも良い手段とは言えません。
食生活の見直しをする上で、どのようなポイントに気を付けるべきか、例としていくつか挙げています。ぜひ参考にしてください。
食生活の見直し
- 1日3食を適切な量でとる(食事回数をむやみに増やしたり、食事を抜いたりしない)
- よく噛んで食べることを意識する
- 間食は控える
- 栄養バランスを考えた食事をとる
2.運動習慣や睡眠習慣の見直し
抗うつ剤によって太ってしまった時の対策として、食生活の見直しと共に見直したいのが運動習慣や睡眠習慣です。
普段から運動習慣がほとんどない方や睡眠不足が続いている方は、太りやすい生活を送っていると言っても過言ではありません。
食生活(食習慣)はもちろん、運動習慣や睡眠習慣なども含めた全体的な生活習慣を見直しましょう。
具体的にどのようなことを意識すれば良いか簡単にまとめておきますので、こちらもぜひ参考にしてください。
運動習慣
- ジョギングやウォーキングなど適度な運動をする
- エスカレーターやエレベーターではなく階段を使う
睡眠習慣
- じゅうぶんな睡眠時間(成人の場合、最低でも6時間以上)をとる
- 就寝時間と起床時間を一定にする
3.減薬
どうしても太りたくないという場合に、減薬(服用する抗うつ剤の量を減らすこと)が試みられることがあります。
ただし、この方法は本来のうつ病の症状を改善する効果そのものを弱めてしまう可能性があるため、必ず担当の医師にしっかりと相談しながら進めてください。
4.変薬
変薬も対策方法のひとつとして試されることがあります。
現在服用している抗うつ剤から同じ種類の別の抗うつ剤に変更したり、抗うつ剤の種類そのものを変えてみるという方法です。
変薬も医師としっかり相談することがとても重要です。
そもそも抗うつ剤の種類を変えることが適切でない場合もあれば、他の薬を服用しているような場合には飲み合わせの問題もあります。
また、急に抗うつ剤を変えることで症状が悪化してしまうリスクも少なからずあるため、医師と相談しながら無理なく変薬していくことが重要です。
まとめ
「抗うつ剤を服用することで太る」というウワサについて解説させていただきました。
この記事で紹介した内容をまとめます。
- 抗うつ剤を服用することで太りやすくなる方もいるというのが正しい
- 抗ヒスタミン作用による影響が太ってしまう原因のひとつであると考えられる
- 太らない様にするためにまずは生活習慣の見直しをしましょう
抗うつ剤を服用したからといって、確実に太ってしまうわけではありません。
太ってしまう可能性はあるものの、生活習慣を見直すことなどで対策することも可能です。
監修者情報
医師
渥美 正彦
所属・資格等
医療法人上島医院 院長
経歴
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部卒業。
近畿大学医学部附属病院(脳神経内科)などを経て2004年、上島医院に入職。05年、同医院併設南大阪睡眠医療センター長。
10年、同医院院長に就任し、現在に至る。精神科と脳神経内科での臨床経験を活かし、患者の脳と心の問題に幅広く対応。
睡眠医療は国内最高水準の専門治療を提供している。
また、公式YouTubeチャンネル『睡眠専門医渥美正彦』では、睡眠障害と精神疾患の正確な情報の発信を続けている。
日本精神神経学会認定精神科専門医。日本睡眠学会認定睡眠医療認定医。
著書に『子供が朝起きなくなったときに、親子で読む本』(セルバ出版)『子どもの発達障害がよくなる睡眠の教科書』(マキノ出版)がある。