更年期症状には漢方が効くってホント?どの漢方薬を使うべき?
女性であれば誰もが訪れる更年期。
そんな更年期にあらわれるさまざまな症状に悩まされるという方は非常に多いです。
そのため、現在では更年期障害に対してのさまざまな治療法があり、その方法の中のひとつに漢方薬を用いた治療があります。
ですが、この漢方薬を用いた治療というのは更年期の症状に対して有効なのでしょうか?
こちらのページではそんな疑問にお答えしていきます。
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更年期症状に対して漢方薬は有効なの?
そもそも論として、更年期の症状に対して漢方薬は有効なのでしょうか?
実際、漢方薬は更年期症状に対して有効とされています。
漢方薬にはさまざまな生薬が配合されており、それぞれの生薬が多角的に更年期の症状に対してアプローチします。
その結果、さまざまな更年期症状に対して効果を発揮します。
また、漢方薬は天然由来の生薬がベースとなっている薬であるため、副作用のリスクが小さいという特徴もあります。
ですが、その反面、漢方薬は効果が緩やかだったり、使い続ける必要があったりするという懸念点があります。
更年期症状に対してはホルモン補充療法が有効
更年期症状に対して、確実な効果を得たいと考えた場合に最も有効な方法となるのは漢方薬ではありません。
更年期によって低下したホルモン分泌をダイレクトに補うことができるホルモン補充療法が最適な対策となっています。
確かな効果を得ることができるホルモン補充慮法ですが、その反面、副作用のリスクが高くなっているという点には注意が必要になります。
また、ホルモン補充療法は受けることができる人と受けることができない人がいます。
そのため、どれだけ高い効果を持っていてもホルモン補充療法を受けることができないという場合がある点にも注意が必要になります。
参考元:HRT(ホルモン補充療法)
ホルモン補充療法を受けられない場合は漢方薬がおすすめ
更年期症状に対して確かな効果を持つホルモン補充療法ですが、受けたくても受けることができないという方がいらっしゃいます。
そうした時に役立ってくれるのが、漢方薬です。
漢方薬は使えないというケースはホルモン補充療法と比べて少なくなります。
また、ホルモン補充療法では副作用があらわれてしまうという方でも漢方薬なら副作用が出ずに更年期症状を抑えられるというケースもあります。
そのため、上記のような理由でホルモン補充療法を受けることができないという場合には、漢方薬を用いるのは非常に有効な選択といえます。
更年期症状に効果的な漢方薬
漢方薬は更年期症状に対しても効果的ですが、一口に漢方薬といってもその種類は無数にあります。
そこで、ここからは実際に更年期症状に対して効果的なものをピックアップしてそれぞれの特徴やどういった症状に対して効果的なのかといったことを紹介していきます。
加味逍遙散(かみしょうようさん)
加味逍遙散はサイコやシャクヤク、ソウジュツやブクリョウなどを配合した漢方薬です。
女性ホルモンのバランスが乱れることによって起きるさまざまな症状に対して活用されています。
当然、女性ホルモンの分泌が止まってバランスが崩れることであらわれる更年期の症状に対しても有効といえます。
こちらの加味逍遙散はさまざまな更年期症状の中でも特にイライラや不眠症、冷えなどの症状に対して高い効果が期待できます。
また、ホットフラッシュや肩こり、疲れやすいといった症状に対しても効果的とされています。
そのため、更年期でイライラすることが増えたという方から眠れずに困っているという方、ホットフラッシュや疲れやすくなっ太という方まで幅広い方に活用していただけます。
参考元:ツムラ漢方加味逍遙散エキス顆粒
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
桂枝茯苓丸は名前にもあるブクリョウのほかに、ケイヒやシャクヤク、トウニンなどの生薬を配合した漢方薬となっています。
こちらは生理痛や肩こり、シミなどの改善に用いられる漢方薬でのぼせているのに足先は冷えているといったような状態に対しても適しているとされています。
また、更年期によってあらわれるイライラや精神的な不安といった症状に対しても効果を発揮します。
これは、桂枝茯苓丸に配合されている生薬が体の上部に集中しているエネルギーである気を下ろし、停滞している栄養や熱を運ぶ血を巡らせることによってさまざまな症状を改善すると考えられています。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は生薬としてトウキやシャクヤクを配合しています。
また、上記のふたつ以外にもソウジュツやタクシャ、センキュウなどの生薬も配合されています。
こちらの当帰芍薬散は体力が落ちている方の冷えや貧血で疲れやすい方、頭重やめまい、動悸などがある方のめまいや立ち眩み、貧血や疲労、肩コリや腰痛、むくみといったものを改善するとされているため、そうした悩みを持つ方に適しています。
当帰芍薬散は漢方医学でいう血と水に作用します。
全身へ栄養や熱を運ぶ血が不足すると、生理不順や冷えの原因となります。身体を潤す水の巡りが悪くなるとむくみや頭痛などを引き起こします。
当帰芍薬散はそんな不足している血を補いながら水のめぐりを高めることで、さまざまな症状を改善へと導くとされています。
参考元:ツムラ漢方当帰芍薬散料エキス顆粒
女神散(にょしんさん)
女神散はコウブシやセンキュウ、ビンロウジやオウレンなどを配合した漢方薬です。
こちらの女神散は体力中程度以上でのぼせやめまいがある方にあらわれる月経症や月経不順。更年期障害の症状に対して効果を発揮するため、上記のような症状があらわれている方に適した漢方薬となっています。
これらの女性ホルモンの変動によって起きる症状に対して高い効果を持っています。
女神散は服用してはいけない方や併用禁忌となっている薬があるため、その点には注意が必要になっています。
投薬禁忌や併用禁忌を破ってしまうと危険な副作用を引き起こしてしまったりすることがあるため、女神散を使う場合は使えるかどうかをまず確認する必要があります。
参考元:医療用医薬品:女神散
五積散(ごしゃくさん)
五積散はマオウやビャクシ、ソウジュツやチンピ、ケイヒなどを配合した漢方薬です。
こちらは体力が中程度で冷えや痛みなどの悩みがある方に適した漢方のひとつとなっています。
これは五積散が漢方医学における気や血の流れを改善する作用があるとされており、この作用によってさまざまな効果を発揮するためです。
更年期によってホルモンバランスが崩れることであらわれるさまざまな症状に対しても同様に効果が期待できることから更年期症状の対策にも活用されています。
また、こちらの五積散は更年期の症状だけでなく、嘔吐や下痢の改善に対しても活用されることがあるため、更年期に悩む女性だけでなく幅広い方に活用されています。
参考元:五積散
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
柴胡桂枝乾姜湯はサイコやケイヒ、カンキョウやオウゴンなどを配合した漢方薬です。
こちらの漢方薬は体力中等以下で冷えや貧血気味、動悸や頭部の発汗がある方の更年期障害症状や不眠、動悸などに対して効果を発揮するため、上記のような症状が更年期にあらわれている方に適しています。
この柴胡桂枝乾姜湯は中国医学でいう、血・気・水の巡りをコントロールします。
気の巡りを良くすることでストレスなどの精神症状を改善し、血の巡りを良くすることで動悸や息切れ、ホットフラッシュなどを改善します。また、水の巡りをよくすることでむくみや疲れなどを改善します。
これらの作用が相乗的に働く事によって、更年期にあらわれるさまざまな症状に対して効果を発揮してくれます。
加味帰脾湯(かみきひとう)
加味帰脾湯はストレスや不眠に対してよく使われる漢方薬のひとつです。
こちらに配合されているのはニンジンやビャクジュツ、サイコやブクリョウなどで、これらの生薬が体力中等度以下の貧血や不眠、精神不安や神経症に対して効果を発揮するとされています。
そのため、体力が落ちている方で精神系の更年期症状があらわれている方に適しています。
加味帰脾湯は中国医学でいう血を補う作用や気を巡らせる作用があります。
人は眠りにつくときに気から生じる熱を鎮める必要がありますが、血が不足してしまっていると、熱を鎮めることができず不眠などの症状を引き起こします。
そこで、加味帰脾湯が血を補うことで十分に気から生じる熱を鎮めたり、気の巡りを整えて不眠や不安などの精神症状などを改善します。
参考元:加味帰脾湯(かみきひとう)
漢方薬は自己判断で掛け合わせない
漢方薬には非常に数多くの種類があるため、自己判断で複数種の漢方薬を服用しようと考える方も少なくありません。
ですが、そうした自己判断による漢方薬の掛け合わせは厳禁です。
これは、それぞれの漢方薬がひとつで最大限の効果を発揮できるように複数の生薬が配合されているためです。
ですから自己判断でかけ合わせたりしてしまうと、何かしらの問題が起きてしまう可能性があるため、複数の漢方薬を使用する場合には漢方薬に精通した専門医に相談した上で判断するようにしてください。
まとめ
こちらのページでは数多くの女性を悩ませる更年期のさまざまな症状に対して効果を発揮する漢方薬について紹介してきました。
更年期による症状はホルモン療法を用いることによって確かな改善効果に期待できます。
ですが、さまざまな事情でそうした治療を受けることができない場合は、漢方薬を用いた対策が非常に有効です。
また、更年期の症状に対して有効な漢方薬もさまざまな種類があるだけでなく、それぞれの漢方薬ごとにどういった症状に対して効果的なのかというのも違っています。
そのため、更年期の症状を漢方薬で対策しようと考えた場合には、こちらのページを参考にまずどういった漢方薬がどういった症状に対して有効なのかを把握した上で使うようにしましょう。

更年期の症状は漢方薬で緩和させることも可能ですが時間もかかってしまいます。早急に改善したいという場合は医薬品がオススメです。更年期の症状を緩和させる治療薬は通販サイトで購入することができます!
監修者情報
医師
石原 新菜(イシハラ ニイナ)
所属・資格等
イシハラクリニック 副院長
ヒポクラティック・サナトリウム副施設長
フェムテック・ジャパン理事
健康ソムリエ理事
ロングライフラボ理事経歴
1980年 長崎市生まれ。幼少期をスイスで過ごし、帰国後は伊豆の緑豊かな環境に育つ。
医学生の頃から自然医学の泰斗で医学博士の父、石原結實と共にメキシコのゲルソン病院、ミュンヘン市民病院の自然療法科、英国のブリストル・キャンサー・ヘルプセンターなどを視察し、自然医学の基礎を養う。
現在は父の経営するクリニックで漢方薬処方を中心とする診療を行うかたわら、テレビ・ラジオへの出演や、執筆、講演活動なども積極的に行い、「腹巻」や「生姜」などによる美容と健康増進の効果を広めることに尽力している。二児の母、また女性としての視点からアドバイスにも定評がある。
著書に13万部を超えるベストセラーとなった『お医者さんがすすめる 不調を治す10倍ショウガの作り方』(アスコム)他、『読む冷え取り』(主婦の友社)、『「空腹の時間」が健康を決める』(新星出版社)、『医者が教える奇跡の16時間断食』(宝島社)、『病気にならない体をつくる こども免疫教室』(日本実業出版社)『体を温める漢方で不調を治す』(PHP文庫)、『「体を温める」と子どもは病気にならない』(PHP研究所)、『水出し健康法』(幻冬舎ルネッサンス)、「『冷え』をとれば9割治る!」(海竜社)、「一週間で体が変わる『温め美人』生活」等、約70冊がある。ムック本などを合わせると100冊を超える。中国、香港、韓国、台湾、ベトナムなどで翻訳されている。
テレビ東京「主治医が見つかる診療所」レギュラー出演中
日本内科学会会員、日本東洋医学会会員、日本温泉気候物理医学会会員