アジーと性感染症、そして「カンジダ」という落とし穴

アジーと性感染症、そして「カンジダ」という落とし穴抗菌薬のアジー性感染症の治療に使われることが多いことから、「同じ性病ならカンジダにも効くのでは?」と考える人もいるでしょう。
そこで、こちらのページではアジーが性感染症のカンジダに効くのかを中心に解説します。

カンジダにアジー?実はまったく効きません

結論から言えば、アジーがカンジダに効くことはありません。
その理由は、カンジダが真菌(カビ)による感染症だからです。

そもそもアジーは、細菌に対して効果を発揮する抗生物質アジスロマイシンを有効成分とする医薬品です。
抗菌薬であって抗真菌薬ではないので、カンジダには効きません。

「アソコに性病っぽいかゆみがある」
「おりものが異常に増えた……性病?」

そんなとき、原因がカンジダだった場合、アジーを飲んでも意味はないのです。

実はアジーの「副作用」にカンジダあり!

股間を押さえる女性アジーの有効成分アジスロマイシンは比較的安全性が高いですが、副作用の可能性もあります。
そして、起こりうる副作用の中に、実は「カンジダ」も含まれているのです!

そもそも、性器に症状があらわれるカンジダは性感染症とされているため「性行為の相手から感染するもの」と思われがちですが、原因はもとから体内にいるカンジダ菌というケースがほとんどです。

実は、カンジダは口の中や性器、皮膚、腸内などあらゆるところに存在している常在菌です。
そして、普段は同じく常在菌であるデーデルライン桿菌(乳酸菌)の働きによって繁殖を防いでいるのですが、何らかの理由でデーデルライン桿菌の働きが弱まると、増殖してさまざまな症状を引き起こします。

アジーの有効成分であるアジスロマイシンもまた、「何らかの理由」に該当します。
アジスロマイシンは体に害をなす細菌も攻撃しますが、同時に善玉菌であるデーデルライン桿菌も攻撃し、そのパワーを弱めてしまうのです……。
結果的に、カンジダ菌が繁殖してカンジダを発症してしまうケースがあります。

アジーの副作用で引き起こされるカンジダの症状まとめ

症状・影響内容
膣内のかゆみの増強善玉菌の減少により、カンジダ菌が繁殖しやすくなり、かゆみが強まることがあります。
白いおりものの悪化カンジダによる分泌物(ヨーグルト状)が増加し、症状が悪化するケースがあります。
外陰部の赤み・腫れ炎症反応が強まり、皮膚や粘膜が刺激を受けやすくなります。
症状の長期化効果のない薬を使うことで治療が遅れ、慢性化や再発につながる可能性があります。

ただし、アジスロマイシンの添付文書によれば、副作用としてカンジダが起こる頻度は0.1~1%未満とされており、確率は高いわけではありません。

効く病気・効かない病気:アジーの守備範囲を知る

アジーは、性感染症の中でも細菌性の感染症に対して非常に高い効果を発揮します。
下記は、代表的な性感染症とアジーの効果についての表です。

疾患名原因アジーの効果備考
カンジダ真菌✕(無効)抗真菌薬が必要、抗生物質で悪化することも
淋菌感染症
(淋病)
細菌✕(無効)以前は効果があったが、現在は耐性菌増加のため使用されない
クラミジア
感染症
細菌◎(有効)1回の服用で治療可能

淋病とアジー:かつての定番が今は不適応

淋病は、淋菌(細菌)によって引き起こされる性感染症であり、かつてはアジーの有効成分アジスロマイシンが「定番の薬」という位置づけでした。

しかし現在、アジスロマイシンに対する耐性菌が世界的に増加しており、アジスロマイシンが治療薬として選択されることは基本的にありません。
厚生労働省や日本性感染症学会のガイドラインでも、アジスロマイシンは推奨薬から外れており、セフトリアキソンなどの第3世代セフェム系抗生物質を単独で使用するのが基本となっています。

つまり、アジーを飲んでも淋病には効果がない可能性がきわめて高いわけです。

クラミジア感染症にはアジーが第一選択

アジーは、昔も今もクラミジアに対して高い効果を発揮します。
男性の尿道炎や女性の子宮頸管炎などを引き起こし、男女問わず不妊の原因にもなるクラミジアは、クラミジア・トラコマチスという細菌によって引き起こされます。
アジスロマイシンは、そんなクラミジアに対して高い抗菌作用を持っています。
1回の服用で治療が完了することも多く、治療しやすさという点でも優れています。

最後に確認!アジーとカンジダ・性感染症の正しい関係

今回はアジーとカンジダの関係を中心に解説しましたが、内容をまとめると次の通りです。

  • アジーは性感染症のカンジダには効果がない
  • アジーの副作用としてカンジダが発症することがある
  • アジーは細菌性の性感染症クラミジアには高い効果を発揮する
  • かつては淋病にも効いたが、耐性菌の影響で現在は使われない

アジーは、真菌によって起こるカンジダには効果がありません。
一方、細菌によって起こるクラミジアについては、有効成分アジスロマイシンが第一選択薬となっています。
ただし、クラミジアの治療のためにアジーを飲むときなど、副作用としてカンジダがあらわれる可能性があるため、その点は注意が必要です。
もしものときのために、カンジダに効く抗真菌薬も用意しておくことをおすすめします!