低用量ピルで不正出血!?これって副作用?対処法は?
現在、幅広い方に避妊や生理痛の軽減のほか、月経困難症の改善などに低用量ピルが役立てられています。
こうしたさまざまな効果を求めて、低用量ピルを服用しようと考えている方や実際に服用してみた方も少なくないでしょう。
そうした時に不安になってしまう問題のひとつに「不正出血」があげられます。
こちらのページでは、そんな低用量ピルを服用している時にあらわれることがある不正出血についてその対策法を紹介していきたいと思います。
低用量ピルの服用を考えているけど、不正出血が心配…そうした方は是非一度ご覧いただき、お役立てください。
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低用量ピルで不正出血になるのは副作用?
どんな医薬品にも副作用はあるものですが、その副作用が不正出血となるとやはり不安にはなるもの。
そこで、まずは「低用量ピルを服用することで起きることがある不正出血は副作用なのか?」といったことから、「なぜ低用量ピルを服用すると不正出血が起きるのか?」といったことまで紹介していきますので、まずは低用量ピルと不正出血の関係について適切な知識を身に着けていきましょう。
低用量ピルで不正出血になる?
低用量ピルを飲むと不正出血が起きると聞くと、まず心配になるのが副作用なのか?ということだと思います。
実際のところ、この不正出血は副作用のひとつです。
しかも、不正出血は低用量ピルを服用した方にあらわれる副作用の中でも、最も多いとされています。
そんな多くの方にあらわれる不正出血という副作用ですが、基本的に症状としては軽微な場合がほとんどとなっています。
また、この不正出血は低用量ピルを初めて服用した方の15~20%にあらわれる副作用となっています。
そのため、子宮頸がん検診や子宮筋腫、卵巣のう腫などの婦人科検診をしましょう。
不正出血になる原因
低用量ピルを服用することであらわれるおそれがある不正出血ですが、この不正出血はどうして起きるのでしょうか?
低用量ピルを服用することで不正出血が起きる原因となっているのが、女性ホルモンの変化です。
低用量ピルは黄体ホルモンや卵胞ホルモンが低用量で含まれているため、ホルモンバランスが変化し、その結果、子宮内膜が剥がれやすくなってしまい、不正出血がおきるのです。
また低用量ピルを飲む時間がズレたり、飲み忘れたりしてしまった場合でも不正出血が起きる場合があります。
これは、低用量ピルの飲み忘れによって女性ホルモン量が減少して出血が起きることがあります。
不正出血が生じる期間はどれくらい?
不正出血は低用量ピルの副作用のひとつですが、実際に低用量ピルを服用した場合、どういったタイミングで不正出血があり、どのぐらいの期間不正出血があるのでしょうか?
不正出血があらわれるタイミングとしては、低用量ピルを飲み始めてからの1~3カ月の間や、飲み忘れたときが多くなります。
こうしたタイミングで起きる不正出血は多くの場合、1日で出血は終わりますが、多くの場合、3日程度で出血は収まります。
稀に、14日(2週間)以上に渡って不正出血が継続するという方もいます。
不正出血の原因が低用量ピルの服用ではなく子宮頸がんや子宮筋腫、卵巣のう腫など病気が原因となっている場合があります。また、膣炎のこともあります。
不正出血がある場合は医師に相談して診察を受けるなどするようにしましょう。
不正出血の見分け方
低用量ピルの副作用である不正出血ではありますが、通常の生理周期に起きる出血とはどういった違いがあるのでしょうか?
ここでは、通常の生理での出血と不正出血の見分け方について紹介します。
基本的に、低用量ピルの服用をしていない場合であれば、生理時以外の出血は全て不正出血となります。
低用量ピルを服用して起きる不正出血の特徴として多いのが「茶褐色の出血」です。そして、出血量は「少量」というのが基本です。
そのため、鮮血が大量に出血するということは基本的にはありません。
大量に出血するときには必ず婦人科を受診しましょう。
低用量ピルを使用して不正出血が起きる4つの可能性
低用量ピルが原因となって起きる不正出血にはいくつの可能性があります。
ここからは、なぜ不正出血が起きるのかを4つの可能性ごとに詳しく紹介していきます。
どういった時に不正出血が起きる可能性があるというのを適切に把握しておくことで、急に出血があったとしても焦ることなく速やかに対処することができます。
当然、排除できる可能性であれば、可能性を排除することで不正出血を予防するというようなことにも繋がっていくので、低用量ピルの服用をお考えの方は把握しておくようにしましょう。
①初めてピルを服用した場合
低用量ピルを服用した時に最も不正出血が起きる可能性が高いのが「初めてピルを服用した場合」です。
既に紹介している様に、低用量ピルには「卵胞ホルモン」と「黄体ホルモン」が含まれています。
そのため、初めて低用量ピルを服用する時は身体の方が低用量ピルによってホルモンバランスが変化してしまうため、ホルモンバランスが不安定になって不正出血が起きてしまうわけです。
しかし、不正出血が起きたとしても一時的にホルモンバランスが不安定になっているだけの場合があり、低用量ピルの服用を継続すれば次第にバランスが安定して不正出血もおさまります。
ただし、1カ月以上不正出血がおさまらない、酷い腹痛を伴うといった場合には別の原因が考えられるため、婦人科などで診察を受けるようにしましょう。
②ピルの服用を忘れてしまった場合
低用量ピルを服用している時に起きてしまう不正出血は、低用量ピルの服用を忘れてしまったタイミングでも起きる可能性があります。
これは、低用量ピルの服用を忘れてしまったことで、女性ホルモン量が低下してしまうことで不正出血に繋がってしまいます。
本来、低用量ピルを服用しない休薬期間や偽薬を服用している期間に起きる出血が低用量ピルの飲み忘れによって起きるため、基本的に問題となることは多くありません。
ただし、低用量ピルの服用を忘れてしまった場合は、避妊効果が消失してしまう可能性があります。
③体調が良くない場合
低用量ピルの服用を行っている時に、風邪などで体調不良になってしまった時にも不正出血の可能性があります。
体調不良と一口にいっても特に、下痢や胃腸の働きが低下しているような場合には不正出血があらわれます。
これは、下痢や胃腸の働きが弱まっている時に、低用量ピルを服用してもピルに含まれているホルモンが体内で十分に吸収されない場合があるためです。
ホルモンが体内で十分に吸収されなかった場合、②の服用を忘れてしまった時と同じように体内のホルモン量が低下してしまいます。
その結果、不正出血が起きてしまう可能性があるわけです。
体調不良による成分の吸収が十分に行われなかったことが原因となるため、休薬期間を設けて、服用を再開しましょう。
④他の薬と服用した場合
低用量ピルを服用している時に不正出血があらわれる可能性のひとつに「他の薬との併用時」があげられます。
他の薬との併用で不正出血があらわれる可能性があるのが、結核やてんかんの治療薬を併用した場合や、下剤や便秘薬などと併用した場合です。
併用で不正出血の可能性があるてんかん治療薬の代表例としては
- フェノバルビタールを配合したフェノバール錠やフェノバルビタール散10%など
- カルバマゼピンを配合したテグレトール錠やカルバマゼピン細粒50%など
- トピラマートを配合したトピナ錠やトピラマート錠など
があげられます。
また、結核の治療薬の代表例としては
- リファンピシンを配合したリファジンカプセルやリファンピシンカプセル
などがあげられます。
これらの薬との併用は、薬の作用で腸内環境が変化したりすることで、体調不良の時と同様に腸内で低用量ピルの成分が十分に吸収されずに排出されてしまう可能性があるためです。
その結果、ホルモン量が低下してしまい不正出血を起こす可能性がでてしまい、避妊効果は低いです。
不正出血が出た時の対処法
低用量ピルを服用した場合に起きる可能性があるのが「不正出血」です。
ここからは低用量ピルを服用して、不正出血が起きた場合はどのように対処すればいいのでしょうか。
- 低用量ピルの服用はすぐにでもやめるべき?それとも続ける?
- 婦人科やクリニックなどで診察を受けるべき?それともその必要はない?
こちらでは低用量ピルを服用した時にあらわれる可能性がある不正出血について、どう対処すればいいのかについて紹介していきます。
低用量ピルの服用は続けるべき?
低用量ピルを服用した時に不正出血があらわれた時に考えるのが低用量ピルの服用を中止するべきか、継続するべきかということです。
基本的に、低用量ピルで不正出血が起きるケースというのは、ホルモンバランスが不安定になって起きるのがほとんどです。
そのため、低用量ピルを飲み始めてすぐに不正出血があらわれた場合は、そのまま低用量ピルの服用を継続して問題ありません。
1ヶ月以上不正出血が続くときは、婦人科を受診してください。
これは、不正出血の原因が低用量ピルの服用ではなく、他の婦人科疾患などが原因と考えられるためです。
病院を受診した方が良いケース
低用量ピルの服用を継続するべきかどうかについては、不正出血があらわれている時期によって変わるということがわかりました。
では、不正出血が起きた場合には、婦人科などで診察を受けるべきなのでしょうか?
基本的に、低用量ピルの服用を1ヶ月以上継続しても不正出血がおさまらなかったり、減少したりしていないような場合は、診察を受けるようにしましょう。
また、不正出血の他に腰痛が酷いような場合も婦人科での診察が推奨されています。
これは、不正出血の原因が低用量ピルではなく、「子宮頸がん」や「子宮筋腫」、「卵巣のう腫」や「膣炎」などが原因となっている可能性があるためです。
普段から、婦人科検診などを受けているような場合、子宮頸がんが原因で不正出血があるような場合、検診のタイミングで気づくことができます。
特に、がんは転移で死のリスクがありますし、子宮筋腫は子宮筋腫のサイズが大きい場合、血栓症のリスクが上昇するため速やかな受診が重要です。
不正出血以外の副作用
低用量ピルを服用した時にあらわれる副作用の中でも多い「不正出血」について、ここまで紹介してきました。
ですが、低用量ピルの副作用は不正出血だけではありません。
そのため、ここからは低用量ピルを服用した時にあらわれる不正出血以外の副作用について紹介していきます。
適切に副作用を把握した上で、その副作用がなぜ起きるのか?そして、病院を受診すべきかなどについて紹介していきますので、お役立て下さい。
頭痛・吐き気・乳房の張り
低用量ピルを服用した時に副作用として「頭痛」や「吐き気」、「乳房の張り」といった症状があらわれることがあります。
この頭痛や吐き気、乳房の張りといった副作用があらわれる原因となっているのは、服用した女性ホルモンの影響です。
そのため、吐き気や乳房の張りといった症状があらわれた場合でも、低用量ピルの服用は継続して問題ありません。
また、継続して服用することでホルモンバランスが安定していくことで、ホルモンバランスが不安定になって起きていた頭痛や吐き気、乳房の張りなどの症状が軽減していきます。
頭痛の場合、静脈洞血栓や脳梗塞の可能性があるため、持続する場合は脳外科の受診をおすすめします。
ただし3か月以上、低用量ピルの服用を継続してもこれらの症状が改善しないような場合には、ホルモンバランスが不安定になることで症状が起きているわけではないと考えられるため、病院を受診するのが推奨されます。
気分のムラ・むくみ・吹き出物
低用量ピルを服用することで「気分のムラ」や「むくみ」、「吹き出物」などがあらわれることがあります。
しかし、低用量ピルとこれらの症状の因果関係はないとされています。
低用量ピルを服用したことによってホルモンバランスが崩れてしまうことで、一時的にこれらの症状があらわれることがありますが、継続して低用量ピルを服用することでホルモンバランスが安定し、徐々に改善していくと考えられます。
ただし、低用量ピルの服用を継続しても症状が改善しないというような場合には、ホルモンバランスの変化以外の原因が考えられるため、病院の受診を推奨します。
下痢・便秘・嘔吐
これまでに紹介した副作用の症状と同様に「下痢」や「便秘」、「嘔吐」といった副作用についても、低用量ピルにより、腸のぜん動運動に影響する可能性があります。
低用量ピルの服用は継続して問題ないですが3カ月服用を続けても症状が改善したり収まらないような場合には、病院の受診が推奨されます。
また、下痢によって成分の吸収が不十分になってしまった場合には、上記の副作用以外にも不正出血が起きたり、避妊効果が低下するといったおそれも出てくるため、適切に避妊を行いたいと考える場合には、医師に相談したりする方が良いと言えます。
血栓症
低用量ピルを服用した時に起きる副作用の中でも、最も危険なのが「血栓症」です。
これは、低用量ピルを服用した初日から3~6ヶ月の期間に起こりやすいとされています。
血栓症とは、その名の通り血の塊が血管の中でつまってしまって栓のようになってしまうものです。
血栓ができてしまうと血の流れが止まってしまい最悪の場合は死に至るケースもあります。
低用量ピルに配合されている卵胞ホルモンには血液を固まりやすくする作用があり、この作用が血栓症を招く一因になっています。
この作用だけで血栓症が引き起こされる可能性はそう高くはありませんが、脱水で血がドロドロになってしまっていたり、喫煙などによる血管の収縮などが重なることで、血栓症のリスクが高くなってしまいます。
そのため、喫煙者や高齢者、高血圧や肥満の方など血栓症のリスクが高い方には基本的に処方されません。
血栓症が副作用としてあらわれると、激しい腹痛や胸痛、頭痛のほかに息苦しさや押しつぶされるような痛み、視野狭窄、舌のもつれ、手足のしびれなどの症状があらわれます。
低用量ピルを服用していて、これらの症状があらわれた場合には、速やかに病院を受診するようにしてください。
まとめ
低用量ピルを服用することであらわれる副作用のひとつとして「不正出血」があります。
この不正出血は低用量ピルを服用する方の多くが経験する副作用のひとつであり、症状は軽度で大きな問題になるケースはそこまで多くありませんが、低用量ピルの服用以外が原因となって不正出血が起きている可能性もあるため低用量ピルを1ヶ月以上継続して服用しているのに、不正出血がおさまらないというような場合には、病院を受診するようにしましょう。
また、低用量ピルの副作用には、不正出血以外にもあるためそれらの症状があらわれた時は速やかに病院を受診してください。
監修者情報
医師
海老根 真由美
所属・資格等
白金高輪海老根ウィメンズクリニック 院長
経歴
大学病院でハイリスク妊婦の治療に従事し、命に向き合う医療の重要性を学ぶ。
開業以来10年、地域医療に尽力し、婦人科・産科に加え、内科・乳腺外科の診療体制を確立。
患者の生活に寄り添う医療を目指し、休日診療や英語対応など柔軟なサービスを提供。
単なる病気の治療にとどまらず、心身の健康維持と充実した人生の支援を使命とする。
医学博士。順天堂大学産婦人科非常勤講師、婦人科形成外科研究会理事。