更年期に生じる関節痛の原因・症状とは?治療方法についてもご紹介

更年期に生じる関節痛の原因・症状とは?治療方法についてもご紹介更年期を迎えると、体におこるさまざまな変化に戸惑う人も多いのではないでしょうか。
特に関節痛は、日常生活に大きな影響を与える症状のひとつです。
 
この記事では、更年期に生じる関節痛の原因と症状について詳しく解説します。
治療方法についても解説するため、更年期の関節痛に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。

 

更年期とは

更年期は女性の生殖機能が完全に消失する閉経の前後5年を合わせた10年を指します。
個人差はあるものの多くの場合、40代後半から50代にかけて訪れます。
この時期は閉経に向かって卵巣機能が低下していき、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの分泌が減少し、閉経を機に一気に減少するのが特徴です。
 
急激なホルモンバランスの変化は、心身にさまざまな影響を及ぼします。
こうしたホルモンバランスの急激な変化によってほてりやのぼせ、寝汗や不眠などの症状があらわれます。
また、気分の変動や疲労感、集中力の低下などもおこりやすくなります。
こうした、更年期にあらわれる症状をまとめて更年期障害と呼びます。
 
また、更年期は女性特有の症状と考えられがちですが、男性でも男性ホルモンの減少により同様の症状に悩まされている人は多いです。
男性の更年期による症状は、「男性更年期障害」ともいわれ、40代を過ぎたあたりから発症する可能性があります。
更年期の症状は個人差が大きく軽度でほとんど気づかない人もいれば、日常生活に支障をきたすほどの強い症状に悩まされる人もいます。
この時期を健康的に乗り越えるためには自身の体調の変化に注意を払い、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。

参考元:更年期とは

 

更年期に生じる関節痛の原因と症状

更年期に経験するさまざまな症状のなかでも、関節痛は多くの人が悩む問題のひとつです。
ここからは、更年期に生じる関節痛の原因と具体的な症状について詳しく見ていきましょう。

参考元:「関節の痛み、こわばり」は「更年期障害」の症状のひとつです

 

更年期に生じる関節痛の原因

更年期に関節痛が生じる主な要因は特にエストロゲンの減少です。
エストロゲンは関節の軟骨や筋肉、腱などの組織の柔軟性を維持する重要な役割を果たしています。
このホルモンが減少した場合、関節組織の弾力性が失われて一時的に痛みやこわばりが生じやすくなることがあります。
 
一方、加齢に伴う筋力の低下や血流の悪化も関節痛の一因となります。
加齢に伴う関節痛は加齢に伴い筋力が弱まることによる関節への負担の増大や、血流の悪化により関節周辺の組織に栄養が行き渡りにくくなるのが原因です。
これらの要因が複合的に作用し、痛みの原因となるのです。

 

更年期に生じる関節痛の症状

更年期の関節痛は、主に手指、肘、腰、膝、足首などにあらわれることが多くなっています。
典型的な症状としては、関節のこわばりや痛み、動きの制限などが挙げられます。
特に朝起きた直後や長時間同じ姿勢でいたあとに、関節が硬くなっていると感じる人も少なくありません。
 
日常生活では、正座をしたときの膝の痛みや、階段の上り下りでの辛さを感じることがあります。
ほかにも、ヒールの高い靴が履きづらくなるなど、足の関節にも影響が出ることがあります。
症状の程度には個人差があり、軽度の違和感があるという人もいれば、歩行が困難になるほどの強い痛みを経験する人もいます。
痛みが長時間続く場合や日常生活に大きな支障をきたす場合は、関節リウマチなどほかの疾患の可能性も考えられるため、医療機関での診察を受けることをおすすめします。

 

更年期の関節症と関節リウマチとの違い

更年期の関節痛と関節リウマチは原因と特徴には明確な違いがあります。
 
更年期の関節痛は、主に女性ホルモンのバランスが原因です。
特にエストロゲンの減少が、関節の滑らかな動きや健康維持に影響を与え、痛みを引きおこすことがあります。
一方、関節リウマチは、体を守るはずの免疫システムが原因です。
関節リウマチは、体を守るための免疫機能が誤って自分の関節を攻撃して関節に炎症などを引き起こす自己免疫疾患です。
 
症状の特徴も異なり、更年期に生じる関節の痛みは、軽い症状から歩行が困難になる症状までさまざまです。
この痛みは複数の関節にあらわれますが、その場所は一定ではなく、体のさまざまな部位で生じます。
また、一日のなかでの時間帯や季節の変化による影響をあまり受けにくいでしょう。
 
対して、関節リウマチは、関節が腫れたり赤くなったりすることがあります。
この症状は慢性的に続くため、日常生活に大きな影響を与えることもあるでしょう。
また、手の指や手首、肩などに症状があらわれやすいだけでなく、右の手の指に症状がでると左の手の指にも症状が出るといった対称性があることも特徴となっています。

参考元:更年期の手指の関節痛

 

更年期に生じる関節痛の治療方法

医者に相談する女性
更年期の関節痛に対しては、さまざまな治療方法が存在します。
ここでは、代表的な4つの治療法について詳しく解説します。
それぞれの特徴や効果を理解し、自分に合った方法を選択するための参考にしてください。

 

ホルモン補充療法(HRT)を行う

更年期の関節痛改善に効果的な方法として、ホルモン補充療法(HRT)があります。
更年期によるエストロゲンの減少によって関節痛が起きている場合、減少しているエストロゲンを補うことによって関節痛の原因を解消します。
また、HRTの効果は関節痛だけでなく、更年期にあらわれるほてりや発汗などのさまざまな自律神経症状全般に効果を発揮します。
 
治療開始時には、むかつきや不正出血といった副作用が生じることがあります。
しかし、多くの場合、これらの症状は時間とともに落ち着いていくため、過度に心配する必要はないでしょう。
医師と相談しながら、自分に合った治療を進めることが大切です。

 

漢方薬で治療を行う

HRTの副作用を懸念する人や、複数の更年期症状に悩む人には、漢方薬による治療も選択肢として検討してみましょう。
漢方は西洋医学と異なり、体全体のバランスを整えることで根本的な改善を目指す治療方法です。
更年期の関節痛に効果的な漢方成分にはケイヒやマオウなどがあり、これらは体を温め、血行を促進する働きがあるとされています。
また、ブシやソウジュツ、ブクリョウも更年期の症状を改善するのに有効として知られています。

 

食事から必要な栄養素を摂取する

更年期の関節痛を緩和するには、日々の食事内容を見直すことも重要です。
まずは、バランスの取れた食事を心がけましょう。
 
特に注目したいのが大豆製品です。
豆腐や納豆などに含まれるイソフラボンは、体内で代謝されて女性ホルモンに似た働きをします。
そのため、イソフラボンを積極的に摂取することで女性ホルモンの減少を緩和できます。
ただし、イソフラボンを代謝できる割合は日本人の半分程度と言われていますので、後述のサプリメントを検討しても良いでしょう。
 
また、大豆製品以外に関節の健康維持に役立つとされるコンドロイチンを多く含むウナギやカレイなどの魚類、山芋やオクラといったネバネバ食材を積極的に摂取することも関節痛の緩和に役立ちます。
他にも、軟骨を構成するグルコサミンを多く含む魚介類やきのこ類を積極的に取り入れることも役立ちます。

 

サプリメントで栄養素を補給する

日々の忙しさで食事内容に気を配るのが難しい場合、サプリメントの活用もひとつの選択肢です。
関節の痛みやこわばりを和らげるのに役立つ栄養素としてヒアルロン酸やグルコサミン、コンドロイチンなどが知られています。
これらは、関節の潤滑や軟骨の強化に寄与する成分です。
また、女性ホルモンの低下を補うために大豆イソフラボンも役立ちます。
大豆イソフラボンの中でもゲニステインは女性ホルモンに似た作用が強いとされており、現在では大きな注目を集めています。
 
サプリメントを利用することで、これらの栄養素を手軽に補給可能です。
サプリメントは薬局や通販サイトでも気軽に購入できるため、手軽に更年期の関節痛対策を始められます。
 

女医

 

更年期に生じる関節痛は適度な運動が大切

更年期の関節痛に悩む人にとって、適度な運動は重要な役割を果たします。
適度な運動は筋力の維持向上、血液循環の改善、さらにはストレス軽減に効果があるでしょう。
 
関節痛の予防や緩和に適した運動として、ウォーキングや水泳、ストレッチなどが挙げられます。
これらの全身運動は血行を促進し、関節の動きを改善する効果に期待できるでしょう。
ただし、体に負荷がかかりすぎない無理のない強度で行うことが大切です。
 
簡単なストレッチとして、立って行う腕の回旋運動があります。
両腕を横に広げ、ゆっくりと小さな円を描くように前後に回してみましょう。
この動きを続けることで、肩や上腕の関節がしなやかになっていくでしょう。
 
また、座った状態で行う足首の回転運動も効果的です。
片足をやや上げて、足首をゆっくりと回すことで、足の血行がよくなります。
ただし、強い痛みを感じる場合は無理をせず、医師に相談することをおすすめします。

参考元:運動でケア

 

まとめ

指示棒を持つ薬剤師
更年期の関節痛は、女性ホルモンの減少が原因です。
症状改善にはホルモン補充療法や漢方療法が効果的とされていますが、副作用に注意が必要です。
また、薬を用いた治療法以外に、大豆イソフラボンやコンドロイチンなどの栄養摂取を心がけることも更年期の関節痛対策として有効な手法となっています。
これらの栄養を食事で摂取するように心がけたり、食事での摂取が難しい場合はサプリメントを活用するようにしてみましょう。
また、適度な運動も重要です
ウォーキングやストレッチなどを行って関節の柔軟性を高め、血行を促進しましょう。
 
これらの対策を組み合わせて自分に合った方法で継続的に取り組むことが、更年期の関節痛の緩和や改善につながります。
症状が気になる場合は、早めに医師に相談することも大切です。

 

監修者情報

中村格子先生

  • 医師

    中村 格子

  • 所属・資格等

    整形外科医師 医学博士・スポーツドクター
    医療法人社団BODHI 理事長、Dr. KAKUKO スポーツクリニック 院長

  • 経歴

    横浜市立大学医学部卒業、同大学院修了
    「健康であることは美しい」をモットーに各種競技の日本代表選手をはじめとしたトップアスリートを支える傍ら、スポーツと医療の架け橋としてより多くの人の健康で美しい人生をサポートすべく自身のクリニックのほか、テレビ・雑誌などのメディアでも多数活動。長年の臨床整形外科医及びスポーツドクターとしての経験から独自のエクササイズを提案。年齢や体力に関係なくどなたでも安心して取り組んでいただけるエクササイズが特長。
    また著書「大人のラジオ体操」はシリーズ累計83万部を超えるベストロングセラーとなっている。