片頭痛に効果的!?片頭痛には予防薬を使った予防的治療がオススメ!
キリキリ、ズキズキと痛む片頭痛。
多くの人は「痛くなってから薬を飲む」といいますが、実は予防薬を飲んだり、予防的治療を行ったりすることで劇的に改善されることがあるのです。
しかし、気になるのは、
「予防薬ってどんな種類があるの?」
「どんな効果があるの?」
といったことではないでしょうか。
そこで、こちらのページでは片頭痛に効果的な予防薬の種類や効果について、また今日から始められる予防的治療について紹介していきたいと思います。
目次 [表示]
片頭痛の対策ってみんなどうしてる?
片頭痛でお悩みの20代~40代の男女1000人にアンケート調査をしたところ、以下のような回答となりました。
- 頭痛が起きたら薬を飲む(72.3%)
- 前兆が出たら薬を飲む(22.4%)
- 日常的な対策をしている(12.1%)
- 予防治療薬を使用している(1.8%)
- その他(1.4%)
このように、約7割の方は『頭痛が発生したら薬を飲む』と回答しています。
次に多かった回答は『前兆が出たら薬を飲む』でした。
痛みが発生した際に飲む通常の痛み止めを服用している方が多いようです。
また『日常的な対策をしている』と回答した方は12.1%で、「片頭痛に効果的な食品(納豆など)を積極的に摂取する」「片頭痛に効くヨガを行う」といった対策をしていることがわかりました。
そして『予防治療薬を使っている』と答えた方は全体の1.8%と、かなり少数派であることがわかりました。
片頭痛は予防的治療が可能!
片頭痛の治療の代表的なものに「急性期治療」「予防的治療」があります。
「急性期治療」とは、頭痛が発生したときに痛みを抑えるために行う治療のことです。
主にNSAIDs系、トリプタン系の痛み止めを服用します。
一方の「予防的治療」は、片頭痛の発作が多かったり、急性期治療の効果が乏しい人が、片頭痛の発作が出るのを予防するために行う治療法です。
日常でできる対策をしたり、片頭痛の予防効果のある薬を服用したりします。
ここでは、予防的治療の内容について「日常でできる予防治療」「予防薬の種類」について解説します。
日常でできる予防的治療
片頭痛持ちの人の中には、「できれば薬は飲みたくない」「薬を飲まずに済む方法を知りたい」という方も多いのではないでしょうか。
そこで、ここでは「薬を服用しなくてもできる予防的治療法」についてまとめてみました。
中には今日から実行できることも含まれていると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
一定のリズムで睡眠をとる
慢性的に片頭痛がある方は、片頭痛がない人に比べて睡眠の質が悪いことがわかっています。
「睡眠の質が悪い」と聞くと、単に「不眠」「睡眠不足」を思い浮かべる方が多いと思いますが、実は「寝すぎ(睡眠過多)」「睡眠時間がバラバラ」もよくないという報告があります。
そのため、まずは「6~8時間」の睡眠を毎日、一定のリズムでとるよう心がけましょう。
なお、「昼夜逆転生活」をされている方や「昼寝をたくさんしている」という方も要注意です。
昼夜逆転や昼寝のし過ぎは、体内のリズムが狂い、自律神経が乱れやすくなります。
自律神経の乱れは、片頭痛の要因の一種です。
そのため、特別な事情がない限りは夜間に、連続して6時間は眠るようにしましょう。
健康的な食生活
食生活と片頭痛は一見無関係なようにも見えるのですが、実は大きく関係します。
たとえば、
- 無理なダイエット
- 食べ過ぎ
- 偏食
などは前述した「自律神経の乱れ」に直結します。
当てはまっている方は、栄養バランスの良い食事を心がけてみてください。
ちなみに、マグネシウム、ビタミンB2は頭痛の予防に効果があります。
わかめやひじきなどの海藻類、豆腐やアーモンドなどを積極的に摂取しましょう。
また、毎日できるだけ決まった時間に3食とることを心がけるのも大事なポイントです。
適度な運動
アメリカでは、「週に150分の運動をすることで、片頭痛を抑制できる可能性がある」という研究結果が発表されています。
実際、日ごろ運動習慣がある人はない人に比べて片頭痛の発生率が少ないことがわかっています。
痛みに悩まされている方こそ、「有酸素運動」がオススメです。
中でも、デスクワークをされている人は運動不足になりがちなので、ご自宅やオフィスでもできるストレッチを取り入れるなど、できることから始めてみましょう。
ストレッチをされる際は、とくに首まわりから肩にかけての部分を入念にほぐしてみましょう。
片頭痛の原因を避ける
頭痛の原因のひとつに、「大きな音」「激しい光」があります。
このページをご覧になっている方の中にも、「よく映画館に行く」「ライブハウスに行くのが好きだ」という方はたくさんいらっしゃると思いますが、こうした場所は避けるか、休憩をはさみながら利用するなど、片頭痛の原因となるものから距離を置くことも大切です。
ちなみに、パソコンやスマートフォンの画面から放たれるブルーライトも「強い光」の一種です。
生活の一部であるこれらの機器ですが、「決められた時間の中で楽しむ」「寝る前には使用しない」などを意識してみてください。
なお、仕事の都合で避けることが難しいという方は、ブルーライトを抑える眼鏡や、パソコン・スマートフォンに貼るシートを活用することをオススメします。
予防的治療をするメリット
予防的治療を行う最大のメリットは「片頭痛の痛みを味わわずに済む」という点にありますが、「急性期治療による薬の使い過ぎを防ぐことができる」というのもポイントです。
- 「薬を飲んでも効かなくなってきた」
- 「薬を飲むと余計に頭が痛くなる」
とお悩みの方は、ぜひこの予防的治療を取り入れてみてください。
さて、ここから先は「予防的治療薬」の紹介となります。
いずれも医師の指示通りに内服しましょう。
予防的治療薬を使用する
「痛くなったら飲む」急性期治療の薬に対し、「痛くなる前に飲む」という予防的治療薬。
代表的なものとしては、
- β遮断薬
- 抗うつ薬
- 抗てんかん薬
- CGRP関連薬
- カルシウム拮抗薬
- 漢方薬
があります。順番に解説していきたいと思います。
β遮断薬
プロプラノロールやメトプロロールなどのβ遮断薬は、心臓の動きをおだやかにする効果があり、高血圧、冠動脈疾患、頻拍性不整脈の治療に用いられています。
さらに、欧米では「片頭痛の予防に効果的がある」として用いられてきた歴史があり、日本国内でもこれが認められるようになったことから、現在は一部の医薬品が「片頭痛の予防薬」として処方されています。
しかし、心不全や喘息などのある人は服用することができません。
抗うつ薬
アミトリプチリン、ノルトリプチリンといった抗うつ薬は、服用することで脳内物質の一種「セロトニン」の代謝が改善し、憂うつな気分がやわらぎます。
さらに、
・うつ病患者が併発することが多い片頭痛にも効果的である
・うつ状態ではない片頭痛持ちの人にも効果がある
ということから、「片頭痛の予防に効果がある」と認められ、日本でもうつ病患者以外への処方が認められるようになりました。
抗てんかん薬
「てんかん」とは、脳の動きが興奮状態になることでけいれんを起こしたり、意識を失ったりする状態のことをいいます。
この治療薬として用いられる抗てんかん薬(バルプロ酸、トピラマートなど)は「脳全体の動きを抑える」といった効果があるのですが、これが片頭痛の減少にも効果があるとして、欧米ではβ遮断薬や抗うつ薬と同じように「片頭痛の予防薬」として長年扱われてきました。
日本でもこの効果を認めており、医師の診断のもとバルプロ酸、トピラマートが処方されることがあります。
CGRP関連薬
CGRP関連薬は片頭痛の治療に用いられる医薬品で、脳内にあるペプチドの一種「CGRP」の働きを抑える効果があります。
CGRPは、片頭痛の要因のひとつです。
CGRPは片頭痛の発症に関係するペプチドといわれていて、片頭痛発作時にはCGRPの濃度が異常に上昇することが分かっています。
現在、日本ではガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブの3つが認められています。
CGRP関連薬の特徴として以下のようなことが挙げられます。
- 注射タイプの治療薬である
- 費用が高額
CGRP関連薬は、内服予防薬で効果がない、あるいは副作用などが原因で内服が使えない等の条件で使用されます。
カルシウム拮抗薬
ロメリジンなどのカルシウム拮抗薬は、血管を拡張させて血圧を下げる薬です。
片頭痛の発作が起こるとされるのは一度収縮した血管が再度拡張されることにあるという説から、 血管の収縮に深く関係するカルシウムイオンの細胞内への流入を阻害することで、脳血管の収縮と拡張の差を小さくして片頭痛発作を軽減する効果が期待できます。
カルシウム拮抗薬は主に高血圧の人に処方されているのですが、上記の「脳血管の過度な収縮運動の予防」に効果があることから、片頭痛発作の予防薬として処方されることがあります。
漢方薬
漢方薬は、生薬を用いた薬のことです。
「不調がある箇所を治す」よりも「からだを正常な状態に戻す」ことに特化しているのが特徴です。
片頭痛に効果的な漢方薬は、
- 五苓散(ごれいさん)
- 呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
- 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
- 釣藤散(ちょうとうさん)
- 葛根湯(かっこんとう)
があります。
とくに頭痛に効果的なのは「五苓散」ですが、
- 【呉茱萸湯】冷えの改善
- 【桂枝人参湯】胃腸の働きの改善
- 【釣藤散】高血圧に伴う諸症状
- 【葛根湯】風邪の初期症状
など、頭痛以外の効果も見込むことができるので、そのときの自分に合った薬を選んでみてください。
予防的治療の注意点
予防的治療は、あくまでも「予防」です。
「しっかり予防していたのに風邪をひいてしまった……」ということがあるように、予防していても片頭痛が起こってしまうことはあります。
また、予防的治療を始めてすぐに効果が現れる人もいれば、なかなか効果が出ない人もいます。
予防的治療は、「確実に治癒するとは限らない」「すぐに効果が実感できるとは限らない」ということを理解した上で行うようにましょう。
また、予防薬を服用する場合は使用上の注意点や、服用する量を必ず守る必要があります。
ときどき「治療薬じゃないから……」と勝手に服用する回数や量を増やしてしまう人がいますが、これはオーバードーズに該当します。
片頭痛以外の症状を引き起こす原因にもなるので控えましょう。
まとめ
こちらのページでは、
- 片頭痛の予防的治療について
- 日常でできる予防的治療
- 予防薬の種類
などについて紹介してきました。
慢性的に片頭痛に悩まされている場合、予防的治療を行うことで対処することができます。
日常的にできる生活習慣の見直し(睡眠や食事の改善、適度な運動など)の他、予防効果のある医薬品を使用するのもオススメです。
予防薬の種類としては、β遮断薬や抗うつ薬、抗てんかん薬、さらにCGRP関連薬やカルシウム拮抗薬、漢方薬といったものが挙げられます。
「片頭痛がいつ起きるかビクビクしている」という方は、そんな状態を改善するため、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。
監修者情報
医師
伊藤 たえ
所属・資格等
菅原クリニック東京脳ドック 院長
経歴
2004年浜松医科大学医学部を卒業。その後、複数の病院での勤務を経て、2019年より医療法人社団赤坂パークビル脳神経外科菅原クリニック東京脳ドックの院長を務められています。
脳神経外科学会専門医
脳卒中学会専門医
脳ドック学会認定医