世界で認められたイベルメクチンの効果と、誤解されがちな適応外使用

世界で認められたイベルメクチンの効果と、誤解されがちな適応外使用イベルメクトールは、抗寄生虫作用を持つイベルメクチンを有効成分とする医薬品です。
日本では疥癬など皮膚系の病気に使われていますが、実は現在、幅広い分野で使えるのではないかと研究が行われています。
こちらのページでは、現在判明しているイベルメクトールの効果について解説します。

世界が認めたイベルメクトールの効果とは

イベルメクトールイベルメクトールは、複数の寄生虫感染症に対する効果が確立されています。
寄生虫を麻痺させて活動不全に追いやり、死滅させて症状を改善するのが基本的な作用機序です。
主に疥癬オンコセルカ症フィラリア症などに使用され、世界的に有効性が認められています。

疥癬の治療薬として唯一適応があり、予防投与にも使われる

疥癬はヒゼンダニが皮膚に寄生することによって起こる感染症で、イベルメクトールは、角化型疥癬を含む疥癬の治療薬として使うことができます。

1~2回の服用で治療が完了することも多いため、非常に手軽です。
また、集団生活の場では疥癬の蔓延を防ぐためにイベルメクトールを予防的に服用することもできます。

WHOも認めたオンコセルカ症治療の第一選択薬

オンコセルカ症は、アフリカ南部などの熱帯地域で多く見られる回旋糸状虫の感染症で、皮膚症状目の症状が特徴です。
イベルメクチンは、予防のために定期的に服用されている他、治療にも使われています。
オンコセルカ症のみられる地域では、失明を予防する重要な薬となっています。

イベルメクトールが変えたリンパ系フィラリア治療

リンパ系フィラリア症は象皮病とも呼ばれる病気で、アフリカや南アジアの国々でよくみられます。
リンパの流れが障害され、四肢が大きく腫れあがる症状が特徴です。

WHOでは、リンパ系フィラリア症がみられる国や地域で毎年1回の抗寄生虫薬投与が望ましいとしており、イベルメクチンもそのひとつに数えられています。

日本でも発症の報告がある糞線虫症にも

糞線虫症は、日本国内でも散発的に見られる線虫感染症です。
イベルメクチンはこの寄生虫に対する駆除効果があり、1回の投与で効果を発揮することもあって第一選択薬となっています。
そのため、イベルメクトールを治療に使うことが可能です。

肌トラブルにも効く?「酒さ」へのイベルメクトール外用薬の効果

酒さ欧米では、外用薬のイベルメクトールクリーム(Soolantra)が顎や口周りなどにあらわれる酒さ様皮膚炎の治療薬として承認されています。
特に、デモデックス(毛包虫)が関与するタイプの酒さには効果があるとされています。
外用薬を用いた酒さの治療は使用から数週間で改善が見られることが多いとされています。
ただし、個人差があるため、長期的な使用が必要なケースもあります。

いつ効く?イベルメクトールの効果発現タイミング

イベルメクトールは、どの病気に使うかによって効果があらわれるまでの時間が異なります。
ここでは、一般的な目安を紹介します。

オンコセルカ症・フィラリア・疥癬・糞線虫症への効果はどのくらいで出るのか?

オンコセルカ症やリンパ系フィラリア症では、イベルメクトールの服用後、数日から1週間ほどで症状の改善がみられることが多いです。

疥癬では、1回の投与後、1週間ほどでかゆみが軽減します。

通常は、1~2週間後に再投与する(1回目の投与でヒゼンダニを駆除しきれない場合があるため)ことで治療が完了します。

糞線虫症では、1回の投与で効果を認めることもありますが、再感染や重症例では追加投与が必要になることがあります。

赤みはどのくらいで消える?酒さ改善までの期間

酒さに対するイベルメクトールクリーム(Soolantra)は、使用開始から数週間で症状の改善がみられることが報告されています。
早い人では2週間程度で効果を感じることもありますが、4週間以上の継続使用が推奨される場合が多いです。

海外ではさらに幅広い分野で使われるイベルメクトール

イベルメクトールは、次のような寄生虫にも効果を発揮するのではないかと考えられています。

毛じらみ海外では一般的に使用されている
日本では適用外だが、一定の効果が報告されている
ツメダニ畜産・獣医学の分野で動物に対する投与が行われている
ウサギのツメダニ治療ではポピュラーな薬となっている
アニキサスあくまでも症例報告レベルだが、将来性はある
住血吸虫研究が行われている
将来は治療薬として使われる可能性がある

がんや難治性疾患の治療にも?イベルメクトールの新たな可能性

研究イベルメクトールは、がんアルツハイマー病、その他の難治性疾患に対する研究も進められています。
しかし、いずれも基礎研究レベルであり、標準治療や予防法としては認められていません。

がん治療の選択肢に?基礎研究から見えた可能性

肝臓がんや胆管がん、すい臓がんなどに対して、イベルメクチンによるがん細胞の増殖を抑制する効果が報告されています。
ただし、細胞実験や動物モデルでの話であり、ヒトに対する大規模な臨床試験は行われていません。

アルツハイマーにも効果が?新たな認知症治療への挑戦

医者アルツハイマー病において、イベルメクトールが神経炎症を抑える可能性が示唆されています。
ただし、これもがん治療と同様に動物実験レベルの研究から見えた可能性であり、臨床応用にはさらなる検討が必要となっています。

ウイルスや細菌にも?広がるイベルメクトール研究

イベルメクチンについて、ウイルスや細菌に対する効果の研究が進められていますが、あくまでも研究・実験段階にとどまっています。

細菌性の性病
(クラミジア等)
効果は確立されていない
アジスロマイシンなどの抗菌薬を使用する必要がある
真菌性の性病
(カンジダ等)
効果は確立されていない
抗真菌薬を使用する必要がある
結核効果は確立されていない
リファンピシンなどの抗生物質を使用する必要がある
ノロウイルス
ヘルペスウイルス
インフルエンザウイルス
効果は確立されていない
抗ウイルス薬を使用する必要がある

コロナ(COVID-19)の治療に使えるのか?世界の評価と現状

2019年末に発生し、世界的パンデミックとなった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、イベルメクチンの飲み方を工夫することで有効性があると示唆されていました。
実際にさまざまな臨床試験が行われましたが、WHOやFDAはCOVID-19に対する有効性を否定しています。
現在では、COVID-19に対する治療薬も登場していることから、COVID-19の治療にも使われません。

イベルメクトールの効果、効かない病気、そして注意点を総整理

イベルメクトールの効果について紹介してきました。
ここまで紹介してきた情報をまとめたものがこちらです。

  • イベルメクトールはフィラリアやオンコセルカ症、糞線虫症に効果がある
  • 海外では外用薬が酒さ治療に用いられる
  • さまざまな病気に対する効果の研究が行われているが、未だ効果がないとされている病気も多い

イベルメクトールは、寄生虫感染症の治療薬として世界的に使用され、その効果は高く評価されています。一方で、がんやウイルス感染症など他の疾患への効果については、まだ不確実な部分が多く、十分な根拠は得られていません。
どういった病気に対して効果があるのかを適切に把握したうえで、活用してください。