糖尿病になるとEDのリスクが高まる!その理由や改善方法とは?
血糖値が高くなる糖尿病は神経障害や網膜症などのさまざまな合併症を引き起こすといわれています。
EDも糖尿病が原因で引き起こる可能性がある症状の1つです。
そのため、糖尿病患者のなかにはEDで悩む人も多いでしょう。
そこで今回は、糖尿病患者がEDを発症しやすい理由や改善方法について詳しく解説します。
併せてED改善におすすめの治療薬も紹介するため、糖尿病が原因でEDに悩む人はぜひ参考にしてください。
糖尿病になるとEDのリスクが高まる
糖尿病を発症すると、EDのリスクが高まるといわれています。
EDとは、性行為の際に十分な勃起が得られない状態、または勃起が持続しない状態のことです。
通常、性的な興奮を脳に受けると勃起に関係する神経から特殊な物質が放出され、陰茎海綿体に信号を送ります。
これにより陰茎海綿体に血液が多く流れ込んで勃起するというメカニズムです。
しかし、EDになると心理的要因や生活習慣病などのさまざまな要因によって血管と神経の働きが不十分となり、陰茎海綿体に血液の流れ込みが足りず勃起できない可能性があります。
一見すると糖尿病との関係はないように思えるかもしれませんが、EDは糖尿病の合併症の1つです。
糖尿病を抱える方はそうでない方と比べてEDを発症するリスクが約3.5倍高いといわれています。
糖尿病患者がEDを発症しやすい理由
糖尿病患者がEDを発症しやすい理由として、主に以下の3つが挙げられます。
- 神経障害により性的反応が低下するため
- 海綿体の機能が低下するため
- 動脈硬化により血液の流れが悪くなるため
ここからは、それぞれの理由について詳しく解説します。
神経障害により性的反応が低下するため
糖尿病の三大合併症として、以下の3つが挙げられます。
- 神経障害
- 網膜症
- 腎症
このうち最も発生頻度が高いのが神経障害です。
血糖値が高い状態が続くことで神経がダメージを受け、しびれや冷感、筋力の低下などさまざまな症状を引き起こします。
EDも神経障害が原因で起きる症状の1つです。
糖尿病になると神経がうまく働かず性的反応が脳から陰茎に伝わりづらくなるのです。
さらに神経障害によって感覚が鈍くなることで、性的刺激への反応が低下することもあります。
このような理由から、糖尿病を発症することでEDが起きてしまいます。
海綿体の機能が低下するため
糖尿病を発症すると、海綿体の機能が低下することがあります。
海綿体は、陰茎や陰核の主体となる組織で勃起を誘発させる大きな役割を持ちます。
海綿体には陰茎海綿体と尿道海綿体があり、このうち勃起と関係があるのは陰茎海綿体です。
性的刺激が起こって陰茎海綿体に血液が流れ込むと、勃起する仕組みになっています。
しかし、糖尿病によって慢性的に血糖値が高い状態が続くと、陰茎海綿体の血管が損傷してうまく機能しなくなります。
陰茎海綿体の機能が低下すると、勃起しても硬さが足りなかったりそもそも勃起しなくなったりするなどのEDの症状が現れます。
また、陰茎海綿体に存在する動脈内のeNOS(内皮型一酸化窒素合成酵素)の活性が弱くなり、血管が広がる力が弱まることもED発症と関係しています。
動脈硬化により血液の流れが悪くなるため
糖尿病は、動脈硬化のリスクも上昇します。
動脈硬化とは、血管の弾力性が失われてしまう状態のことです。
健康的な血管にはしなやかさがありますが、動脈硬化を起こした血管は厚みが増して硬くなってしまいます。
特に陰茎にある血管は細いため、動脈硬化の影響を受けやすいことが特徴です。
その結果、陰茎海綿体への血液の流入が妨げられてEDが引き起こります。
なお糖尿病患者は、そうでない方と比べて動脈硬化を発症するリスクが2~3倍になることが分かっています。
糖尿病が原因によるEDの改善方法
糖尿病が原因によるEDを改善するためには、以下の2つのポイントを押さえておくことが重要です。
- 定期的に運動する
- 栄養バランスのよい食事をとる
ここからは、それぞれの改善方法について詳しく見ていきましょう。
定期的に運動する
糖尿病によるEDを改善するには、定期的に運動を行うことが大切です。
運動は糖尿病の原因である血糖値を下げ、インスリン抵抗性や脂質代謝を改善する効果があります。
運動といっても、息が切れるほど激しく体を動かす必要はありません。
具体的には、週に150分以上または週に3回以上のややきついと感じる中等度の運動を行うようにしてください。
有酸素運動を行う場合、1回につき20分以上継続することが効果的とされています。
さらに余裕がある方は、有酸素運動と合わせて週に2~3回程度のレジスタンス運動も行いましょう 。
レジスタンス運動とは、腹筋や腕立て伏せのように筋肉に繰り返し負荷をかける運動のことです。
有酸素運動と組み合わせて行うことで、より効果的に血糖値のコントロールができるようになります。
栄養バランスのよい食事をとる
糖尿病によるEDを改善するためには、栄養バランスの整った食事をとることが重要です。
適切な食事を心がけることで糖尿病の合併症を予防し、脂質異常症や高血圧の改善にもつながります。
まず、健康を保つために必要な三大栄養素である「炭水化物」「たんぱく質」「脂質」をバランスよくとるようにします。
1日に摂取するエネルギーのうち、それぞれの栄養素からとるエネルギーの割合が下記になるように意識しましょう 。
- 炭水化物:摂取エネルギーの40~60%
- たんぱく質:摂取エネルギーの20%以内
- 脂質:炭水化物とたんぱく質で補えなかった分を摂取
なお1日に必要な摂取エネルギーは年齢や性別、身長、体重、活動量などによって異なります。
そのため、糖尿病の治療を受けている医療機関で自身に必要な摂取エネルギーについて相談してみましょう。
糖尿病によるEDの改善にはED治療薬がおすすめ
糖尿病は発症すると完治はできません。
運動療法や食事療法によって血糖値を正常に近い状態で保つことはできますが一生の付き合いとなります。
そのため、合併症であるEDに悩まされる機会が増える可能性もあるでしょう。
そのような方におすすめなのがED治療薬です。
ED治療薬を使用すれば、EDを改善できる可能性があります。
ここからは、代表的な3つのED治療薬を紹介します。
バイアグラ
バイアグラは、ED治療薬として世界で初めて開発・販売された薬です。
その主成分であるシルデナフィルは、ホスホジエステラーゼ(PDE)5という酵素を阻害して陰茎海綿体にある平滑筋をゆるめ、勃起を促す効果があります。
効果の持続時間は4~5時間 と短めですが、確かな効果が期待できます。
ただし、食事後すぐにバイアグラを摂取すると、効果が現れるまでの時間が遅れることがあるため、できるだけ空腹時に使用してください。
レビトラ
レビトラはバイエル薬品が販売していたED治療薬です。
現在、バイエル薬品のレビトラは販売中止となってしまったため、国内ではジェネリック医薬品が取り扱われています。
主成分は、バルデナフィルです。
レビトラもバイアグラと同様にホスホジエステラーゼ5を阻害することで、陰茎海綿体をゆるめて血液を流入させる効果があります。
作用時間は 10mgで4~5時間、20mgで8~10時間 です。なお標準的な食事であれば、食後の摂取でも効果に影響はないとされています。
シアリス
シアリスは、作用時間が10mgで20~24時間、20mgで30~36時間と長時間持続するED治療薬です。
有効成分であるタダラフィルは、ほかのED治療薬と比べて食事の影響を受けにくいという特徴があります。
そのため、時間帯を気にせず服用できライフスタイルに合わせやすいED治療薬といえるでしょう。
なお、作用時間が長いからといって常に勃起しているわけではありません。
性的刺激を受けたときのみ効果が発揮されるため、安心して使用できます。
まとめ
糖尿病を発症するとEDになるリスクが高まります。
これは、糖尿病に伴う神経障害や海綿体の機能不全、動脈硬化などが原因です。
糖尿病が原因でEDになっている場合、まずは運動療法や食事療法などで血糖値のコントロールを行いましょう。
それでも十分な効果が出ない場合は、バイアグラやレビトラ、シアリスなどのED治療薬の使用を検討するとよいでしょう。
EDは諦めるべき問題ではありません。
適切な治療薬を医師に相談して処方してもらうことで、EDの改善が可能となります。
糖尿病が原因であるEDに悩む人は、この記事を参考に改善方法を実践してみましょう。
監修者情報
執筆者
岡本妃香里(おかもと ひかり)
所属・資格等
薬剤師
経歴
2014年に薬学部薬学科を卒業し薬剤師資格を取得。大手ドラッグストアで4年間勤務し、調剤とOTC販売の両方の経験を積む。2018年からフリーライターとして独立し、医療記事を中心に執筆を行っている。現在は執筆だけでなく編集や校正、監修などさまざまな場面で活動中。