アルツハイマーの治療薬として新たに承認されたレカネマブとは!?
2023年8月21日、厚生労働省の専門部会はアルツハイマー治療薬である「レカネマブ」の承認を了承しました。
これによって、アルツハイマー治療に新しい手法が増えることになります。
これまでアルツハイマーは一度発症してしまうと、完治させることはできませんでした。
- 今回承認されたレカネマブを用いることで完治は可能なのか?
- どういった仕組みでアルツハイマーを改善するのか?
- 副作用はあるのか?
といったことについて紹介していきますので、是非お役立てください位。
目次
新たに承認された「レカネマブ」とは?
先日、厚生労働省の専門部会で承認が了承されたアルツハイマー治療薬の「レカネマブ」とはいったいどういった治療薬なのでしょうか?
レカネマブは日本の製薬会社である「エーザイ」とアメリカの医薬品メーカー「バイオジェン」が手を組み開発していたアルツハイマー治療薬です。
こちらのレカネマブは、今年の1月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)へと承認申請をしており、厚生労働省からも優先審査品目に指定されていました。
既にアメリカでは7月に承認され、実際に使用されています。また、エーザイではアメリカの他にも韓国や中国、カナダやEUでも承認申請を行っています。
今回こちらの専門部会で承認が了承されたことで、厚生労働省からの承認を経て、実際に医療現場で使用されるようになります。
厚生労働省からの承認が8月中だった場合、医療現場で使用されるようになるのは10月や11月ごろと考えられています。
承認から実際の使用までには、薬価の決定や保険適用の対象とするかの決定を行う必要があるため、承認から2~3か月の期間が必要になるためです。
レカネマブがアルツハイマーを改善する仕組み
今回、厚生労働省の専門部会で承認が了承されたレカネマブは一体どのようにしてアルツハイマーを改善するのでしょうか?
基本的に、こちらのアルツハイマー治療薬はアルツハイマーを改善するという効果はありません。
アルツハイマーの進行を緩やかにすることができる治療薬として承認されています。
現在、アルツハイマーの治療薬として承認されている薬は脳の機能を活発にしてアルツハイマーの進行を抑える対症療法となっています。
しかし、こちらのレカネマブはアルツハイマーの原因とされている「アミロイドβ」と呼ばれる物質を除去することでアルツハイマーの進行を抑えます。
アルツハイマーの原因とされる物質を取り除くという仕組みはこれまでのものとは全く違った治療アプローチであり初めての治療法となります。
こちらのレカネマブには破壊されてしまった脳細胞を再生するといった効果はありません。
そのため、進行してしまったアルツハイマーを改善することはできないため、投与対象は軽度認知障害の患者や軽度認知症の患者となっています。
レカネマブには副作用はある?
新たに承認が了承され、大きな期待を寄せられているアルツハイマー治療薬のレカネマブですが、副作用もあります。
実際にレカネマブを用いた治験で報告が合った副作用は以下の通り。
- アレルギー反応:26.4%
- 脳微小出血:17.3%
- 脳浮腫:12.6%
- 頭痛:11.1%
- 転倒:10.4%
また、重篤な副作用の発現率は14.0%という結果が出ています。
参考元:エーザイ|抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」の早期アルツハイマー病に対する臨床第Ⅲ相Clarity AD検証試験結果を第15回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)において発表
上記のようにいくつかの副作用が報告されていますが、ほぼほぼ安全であると考えることができます。
しかし、治験後の非盲検長期投与試験では3例の死亡例が報告されています。エーザイによるとこの3例の死亡例については抗凝固薬使用などの他のリスク因子があったとしてレカネマブが原因となっている死亡ではないと評価しています。
このことから、比較的安全に使用することはできそうですが、今後の経過の観察も十分に行っていくという必要がありそうです。
アルツハイマーをレカネマブで治療した場合の費用は?
新しいアルツハイマーの治療薬として承認が了承されたレカネマブですが、実際にこの治療薬を使ってアルツハイマーの治療を行いたいと考えた時、どの程度の費用が必要になるのでしょうか?
まだ、保険の適用対象となるかどうかや薬価が決まってはいないため、ハッキリとしたことは言えません。
ですが、先にレカネマブが承認されたアメリカではレカネマブを用いたアルツハイマー治療で必要になる費用は年間で約370万円(1ドル140円換算)となっています。
年間で数百万円といった高額な費用が必要になる治療であるため、簡単にレカネマブを用いた治療を行うということは難しいかもしれません。
ただし、こちらのレカネマブを用いた治療が保険適用の対象となる場合には、高額療養費制度によって治療にかかる費用を抑えることが可能です。
この制度は月収や年齢などから算出した自己負担限度額を超えた分の費用を払い戻してもらえる制度になります。
そのため、この制度が利用できる場合には、制度を利用することによって費用負担を大きく抑えることが可能になります。
高額療養費制度についての詳しい情報はこちら
アルツハイマーとは!?
アルツハイマーは現代の日本における高齢者の認知症の中でも最も一般的な疾患です。
不可逆的な進行性の脳疾患のひとつであり、最終的には日常生活を送るための単純な作業ですら失われてしまいます。
アルツハイマーの初期症状は記憶や思考能力の障害といった些細なものであるため、気づいた時には日常生活に支障があらわれているといった場合が珍しくありません。
アルツハイマーはアミロイドβと呼ばれる脳内で作られるたんぱく質の蓄積していき、脳が委縮することによって記憶などに障害があらわれます。
今回承認されたアルツハイマー薬のレカネマブはこのアミロイドβを除去してアルツハイマーの進行を遅らせます。
また、これまでに承認されてきたアルツハイマー治療薬は脳の働きを高めることでアルツハイマーの進行を遅らせます。
こうした投薬治療が現在のメインの治療法となっています。
しかし、こうした治療法ではアルツハイマーを完全に治療することはできません。
そのため、治療を行っていても徐々に進行はしてしまうのです。当然そうなればアルツハイマー治療のために病院へ付きそったり、自宅で介護など家族の負担はさまざまな部分で非常に大きくなってしまいます。
すぐに購入できるアルツハイマー治療薬も多数ある
一度罹患してしまうと、完全な治療ができないアルツハイマー。
先日、レカネマブの承認が了承され、非常に大きな期待を向けられています。
ですが、実際に使用できるのはまだ少し先になりそうなうえ、薬価や保険適用の対象となるかの判断も残っています。
薬価や保険適用の有無などによっては、使用できる様になっても使えないという状況になる方も少なくないと考えられます。
ですが、そうした時には、これまでにアルツハイマー治療薬として承認された治療薬が役立ちます。
こうした治療薬でもアルツハイマーの進行を遅らせることができますし、これまで治療に使われてきているという実績があります。
また、ジェネリックも登場しているため、安価でアルツハイマーの治療を行うことが可能です。
ここからは、これまでに登場してきたアルツハイマーの治療薬について紹介していきます。
イクセロン・ジェネリック
最初に紹介するアルツハイマー治療薬は「イクセロン・ジェネリック」です。
こちらは、有効成分にリバスチグミンを配合したアルツハイマーの治療薬で、日本国内でも処方されている治療薬のジェネリック医薬品です。
有効成分のリバスチグミンは脳の働きを活性化させることで、アルツハイマーの進行を抑制します。
価格は1箱3,760円(1錠あたり75円)となっています。また、まとめ買いの場合は1錠あたり47円で購入することも可能です。
アルツハイマーの投薬治療は継続して行う必要があるため、まとめ買いで安価になるのは非常に大きなメリットといえます。
アドメンタ
次に紹介するアルツハイマー治療薬は「アドメンタ」です。
こちらはインドのSun Pharmaが製造・販売しているジェネリック医薬品になります。
日本では第一三共がメマリーという名称で販売しているアルツハイマー治療薬と同じ有効成分のメマンチン塩酸塩を配合しています。
このアドメンタは有効成分がアルツハイマーに関与すると考えられているグルタミン酸神経系の機能異常を抑制する効果があります。
この効果によってアルツハイマーの進行を抑えます。
アドメンタの価格は1箱あたり7,460円(1錠あたり75円)となっています。
レミニール
最後に紹介するのはJanssenが製造・販売している「レミニール」です。
有効成分として配合されているのはガランタミン臭化水素酸塩で、日本国内でもレミニールがアルツハイマーの治療薬として処方されています。
このガランタミン臭化水素酸塩は脳内のコリン機能を増強させて、集中力の向上や記憶力の向上といった効果に期待できます。
レミニールの持つこうした効果によってアルツハイマーの進行を抑制します。
価格については1箱あたり5,360円(1錠あたり191円)となっています。また、レミニールは成分量が違う3タイプで展開されているため、錠剤を分割して服用したりすることでお得に購入することができます。
まとめ
アルツハイマーの治療薬として厚生労働省の専門部会で先日、承認が了承されたレカネマブについて
- アルツハイマーを改善する仕組み
- レカネマブを使った時の副作用
- レカネマブでアルツハイマーを治療する時の費用
といったことを紹介してきました。
一度なってしまうと完治させることができないアルツハイマーだからこそ、新薬の登場は大きな期待を向けられています。
ですが、今回承認が了承されたレカネマブは残念ながら、アルツハイマーを根本的に治療するというものではありませんでした。
ですが、これまでにアルツハイマー治療薬として承認されてきた治療法とは一線を画す、別のアプローチで進行を抑制する効果があるため、その点には大いに期待できるといえます。
完治させることができない疾患だからこそ、さまざまな治療法があるというのは非常に大きなメリットといえますし、自身が罹患した場合も治療の選択肢が広がるので、非常に有益だといえます。