アルツハイマーの治療薬として新たに承認されたレカネマブとは!?

アルツハイマーの治療薬として新たに承認されたレカネマブとは!?2023年8月21日、厚生労働省の専門部会はアルツハイマー治療薬である「レカネマブ」の承認を了承しました。
これによって、アルツハイマー治療に新しい手法が増えることになります。
これまでアルツハイマーは一度発症してしまうと、完治させることはできませんでした。

  • 今回承認されたレカネマブを用いることで完治は可能なのか?
  • どういった仕組みでアルツハイマーを改善するのか?
  • 副作用はあるのか?

といったことについて紹介していきますので、是非お役立てください。

 

新たに承認された「レカネマブ」とは?

レカネマブ先日、厚生労働省の専門部会で承認が了承されたアルツハイマー治療薬の「レカネマブ」とはいったいどういった治療薬なのでしょうか?
レカネマブは日本の製薬会社である「エーザイ」とアメリカの医薬品メーカー「バイオジェン」が手を組み開発していたアルツハイマー治療薬です。
レカネマブは、2023年7月にアメリカで承認されたのを皮切りに、現在では、中国、英国、韓国など世界各国で認知症治療薬として承認されており、日本でも、2023年9月25日に厚生労働省がレカネマブの製造販売を承認し、12月20日には保険承認されています。

 

レカネマブがアルツハイマーを改善する仕組み

アミロイドβ今回、厚生労働省の専門部会で承認が了承されたレカネマブは一体どのようにしてアルツハイマーを改善するのでしょうか?
基本的に、こちらのアルツハイマー治療薬はアルツハイマーを改善するという効果はありません。
アルツハイマーの進行を緩やかにすることができる治療薬として承認されています。
 
現在、アルツハイマーの治療薬として承認されている薬は脳の機能を活発にしてアルツハイマーの進行を抑える対症療法となっています。
しかし、こちらのレカネマブはアルツハイマーの原因とされている「アミロイドβ」と呼ばれる物質を除去することでアルツハイマーの進行を抑えます。
アルツハイマーの原因とされる物質を取り除くという仕組みはこれまでのものとは全く違った治療アプローチであり初めての治療法となります。
 
こちらのレカネマブには破壊されてしまった脳細胞を再生するといった効果はありません。
そのため、進行してしまったアルツハイマーを改善することはできないため、投与対象は軽度認知障害の患者や軽度認知症の患者となっています。
 
 

レカネマブには副作用はある?

副作用について考える壮年女性新たに承認が了承され、大きな期待を寄せられているアルツハイマー治療薬のレカネマブですが、副作用もあります。
実際にレカネマブを用いた治験で報告があった副作用は以下の通り。

  • アレルギー反応:26.4%
  • 脳微小出血:17.3%
  • 脳浮腫:12.6%
  • 頭痛:11.1%
  • 転倒:10.4%

また、重篤な副作用の発現率は14.0%という結果が出ています。

参考元:エーザイ|抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」の早期アルツハイマー病に対する臨床第Ⅲ相Clarity AD検証試験結果を第15回アルツハイマー病臨床試験会議(CTAD)において発表

 
特に、使用後数ヶ月は、脳浮腫や脳微小出血がおこりやすい傾向ため、治療開始時および投与中は、MRIによる定期的なチェックが必要です。
ただ、レカネマブ投与初期に起こりやすい脳浮腫や脳微小出血の大半は無症状であり、ほぼほぼ安全な治療薬と考えることができます。

 

アルツハイマーをレカネマブで治療した場合の費用は?

お金新しいアルツハイマーの治療薬として承認が了承されたレカネマブですが、実際にこの治療薬を使ってアルツハイマーの治療を行いたいと考えた時、どの程度の費用が必要になるのでしょうか?
保険承認されたことで、レカネマブの投与対象となれば、健康保険を利用して治療を受けることができます。
 
その場合、レカネマブを使用した治療を1年間受けるために必要な費用は、298万円(体重50キロの場合)です。
年間で数百万円といった高額な費用が必要になる治療であるため、簡単にレカネマブを用いた治療を行うということは難しいかもしれません。
ただ、レカネマブを用いた治療は、高額療養費制度の対象であるため、高額療養費制度を利用すると、実際の自己負担額は、70歳以上の一般所得層(年収156万~約370万円)で年14万4000円が上限となります。
高額療養費制度についての詳しい情報はこちら
 
 

アルツハイマーとは!?

脳の様子アルツハイマーは現代の日本における高齢者の認知症の中でも最も一般的な疾患です。
不可逆的な進行性の脳疾患のひとつであり、最終的には日常生活を送るための単純な作業ですら失われてしまいます。
 
アルツハイマーの初期症状は記憶や思考能力の障害といった些細なものであるため、気づいた時には日常生活に支障があらわれているといった場合が珍しくありません。
アルツハイマーはアミロイドβと呼ばれる脳内で作られるたんぱく質が蓄積していき、脳が委縮することによって記憶などに障害があらわれます。
今回承認されたアルツハイマー薬のレカネマブはこのアミロイドβを除去してアルツハイマーの進行を遅らせます。
 
また、これまでに承認されてきたアルツハイマー治療薬は脳の働きを高めることでアルツハイマーの進行を遅らせます。
こうした投薬治療が現在のメインの治療法となっています。
しかし、こうした治療法ではアルツハイマーを完全に治療することはできません。
そのため、治療を行っていても徐々に進行はしてしまうのです。
当然そうなればアルツハイマー治療のために病院へ付きそったり、自宅で介護など家族の負担はさまざまな部分で非常に大きくなってしまいます。

 

すぐに購入できるアルツハイマー治療薬も多数ある

アルツハイマー治療薬一度罹患してしまうと、完全な治療ができないアルツハイマー。
先日、レカネマブの承認が了承され、非常に大きな期待を向けられています。
ですが、治療対象は、軽度認知障害または認知症軽度の方と投与対象が限られており、アルツハイマーと診断された全ての方が使用できるわけでなく、アルツハイマーと診断されてもレカネマブによる治療を受けることができない場合もあります。
 
そうした時には、これまでにアルツハイマー治療薬として承認された治療薬が役立ちます。
こうした治療薬でもアルツハイマーの進行を遅らせることができますし、これまで治療に使われてきているという実績があります。
また、ジェネリックも登場しているため、安価でアルツハイマーの治療を行うことが可能です。
ここからは、これまでに登場してきたアルツハイマーの治療薬について紹介していきます。

 

イクセロン・ジェネリック

イクセロン・ジェネリック最初に紹介するアルツハイマー治療薬はイクセロン・ジェネリックです。
こちらは、有効成分にリバスチグミンを配合したアルツハイマーの治療薬で、日本国内でも処方されている治療薬のジェネリック医薬品です。
有効成分のリバスチグミンは脳の働きを活性化させることで、アルツハイマーの進行を抑制します。
 
価格は1箱4,060円(1錠あたり81円)となっています。また、まとめ買いの場合は1錠あたり46円で購入することも可能です。
アルツハイマーの投薬治療は継続して行う必要があるため、まとめ買いで安価になるのは非常に大きなメリットといえます。
 

 

アドメンタ

アドメンタ次に紹介するアルツハイマー治療薬はアドメンタです。
こちらはインドのSun Pharmaが製造・販売しているジェネリック医薬品になります。
日本では第一三共がメマリーという名称で販売しているアルツハイマー治療薬と同じ有効成分のメマンチン塩酸塩を配合しています。
このアドメンタは有効成分がアルツハイマーに関与すると考えられているグルタミン酸神経系の機能異常を抑制する効果があります。
この効果によってアルツハイマーの進行を抑えます。
 
アドメンタの価格は1箱あたり7,460円(1錠あたり74円)となっています。
 

 

レミニール

レミニール最後に紹介するのはJanssenが製造・販売しているレミニールです。
有効成分として配合されているのはガランタミン臭化水素酸塩で、日本国内でもレミニールがアルツハイマーの治療薬として処方されています。
このガランタミン臭化水素酸塩は脳内のコリン機能を増強させて、集中力の向上や記憶力の向上といった効果に期待できます。
レミニールの持つこうした効果によってアルツハイマーの進行を抑制します。
 
価格については1箱あたり6,860円(1錠あたり245円)となっています。
また、レミニールは成分量が違う3タイプで展開されているため、錠剤を分割して服用したりすることでお得に購入することができます。
 

 

まとめ

アルツハイマーの治療薬として保険承認されたレカネマブについて

  • アルツハイマーを改善する仕組み
  • レカネマブを使った時の副作用
  • レカネマブでアルツハイマーを治療する時の費用

といったことを紹介してきました。
 
一度なってしまうと完治させることができないアルツハイマーだからこそ、新薬の登場は大きな期待を向けられています。
ですが、今回承認が了承されたレカネマブは残念ながら、アルツハイマーを根本的に治療するというものではありませんでした。
ですが、これまでにアルツハイマー治療薬として承認されてきた治療法とは一線を画す、別のアプローチで進行を抑制する効果があるため、その点には大いに期待できるといえます。
完治させることができない疾患だからこそ、さまざまな治療法があるというのは非常に大きなメリットといえますし、自身が罹患した場合も治療の選択肢が広がるので、非常に有益だといえます。

 

女医

監修者は記事の内容について監修しています。
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監修者情報

豊田早苗先生

  • 医師

    豊田早苗

  • 所属・資格等

    とよだクリニック院長

  • 経歴

    鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。
    2005年とよだクリニックを開業し院長に。
    患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん1人1人に合わせた診療を行っている。