糖尿病は遺伝するの?遺伝する確率や遺伝以外の原因ついて解説
糖尿病は合併症が進むと視力が落ちたり、手足がしびれたりするなどのさまざまな症状を引き起こす怖い病気です。
なかには、家族に糖尿病を発症している人いて自身にも遺伝しているのではないかと不安になる人は多いでしょう。
そこでこちらでは、糖尿病が遺伝する確率について解説します。
また遺伝以外の糖尿病が発症する原因についても解説するため、家族に糖尿病を発症している人は、ぜひ参考にしてください。
糖尿病は遺伝する?
糖尿病は遺伝するのか気になる人は多いでしょう。
まずは、糖尿病が遺伝するのか解説していきます。
糖尿病は遺伝する傾向にある
結論からいうと糖尿病は遺伝しやすい傾向にあります。
と言っても「親が糖尿病であれば、その子も糖尿病になる」というシンプルな関係ではなく、あくまでも親の糖尿病になりやすい体質的傾向が一定の割合で共通し、その傾向は環境の要素でも変化しうる、というくらいの意味で受け止めてもらえればと思います。
糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があり遺伝しやすいのは2型糖尿病です。
両親がともに2型糖尿病である場合は、その子どもは40~50%の確率で糖尿病になるといわれています。
一方で、両親が1型糖尿病の場合、その子どもが糖尿病になる確率は3~5%です。
このように糖尿病の遺伝する確率は1型糖尿病か2型糖尿病で大きく異なります。
ただし、両親ともに2型糖尿病であるため必ずしも子どもも糖尿病になるとは限りません。
必ずしも遺伝するわけではない
糖尿病は病気自体が遺伝するわけではなく、「糖尿病になりやすい体質」が遺伝します。
そのため、遺伝的に糖尿病になりやすい体質であったとしても、健康的な生活を送っていれば糖尿病になるリスクを低減できます。
ですから、両親がともに糖尿病であっても子どもが必ずしも糖尿病が発症するとは限りません。
両親がともに糖尿病であるという人は、健康的な生活を送るように心がけましょう。
1型糖尿病と2型糖尿病とは?
先述した通り遺伝しやすい糖尿病は2型糖尿病です。
しかし、そもそも1型糖尿病と2型糖尿病はどういう違いがあるのでしょうか。
ここからは、それぞれの特徴について解説します。
1型糖尿病
1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊されることで、インスリンがほぼ分泌されなくなる病気で若い世代によく見られます。
インスリンとは、血糖値を低下させるホルモンのことでインスリンが分泌されず血糖値が低下できなくなると血液に影響してさまざまな合併症を引き起こします。
そのため、インスリンを補うためのインスリン療法が必要です。
1型糖尿病は、一卵性双生児に遺伝した際に注意が必要で、片方が発症するともう片方も発症する確率は30~70%といわれています。
一方で二卵性双生児の場合だと発症する確率は6%~10%で、これは兄弟や姉妹も同様です。
2型糖尿病
2型糖尿病は、インスリンが分泌されにくくなったり、効かなかったりするなどが原因で血糖値が高くなる病気です。
1型糖尿病は若い世代が発症しやすいのに対して、2型糖尿病は中高年が発症しやすいといわれています。
なお、糖尿病患者のうち約95%は2型糖尿病であるため、糖尿病といわれると2型糖尿病を指すことが一般的です。
2型糖尿病は、一卵性双生児の片方が発症した場合、もう片方が将来的に発症する確率は約75%といわれています。
2型糖尿病は、遺伝による体質に加えて生活環境や生活習慣の乱れも原因となる要素も大きいため、特に家族では遺伝だけではなく日常生活のパターンが共通している可能性にも目を向ける必要があります。
家族に2型糖尿病を発症している人がいる場合は予防を心がける必要があります。
糖尿病の遺伝以外の原因
先述した通り、糖尿病は遺伝以外にも生活環境や生活習慣の乱れなどが原因で発症する可能性があります。
具体的には、以下のような原因です。
- 肥満
- 過食や多飲
- 運動不足
- 加齢
ここからは、それぞれの原因について詳しく見ていきましょう。
肥満
BMIの数値が25以上の人や内臓脂肪多い人、脂肪肝の人は糖尿病に注意する必要があります。
BMIとは、肥満度を表す体格指数のことで以下のような計算で算出することが可能です。
- BMI=身長(m)×身長(m)÷体重(kg)
BMIの数値が25以上の人は肥満と判定されます。
肥満になるとインスリンの効きが悪くなってしまい、血糖値が高い状態で維持されます。
ダイエットを行うことで、血糖値を低減できるため肥満気味な人は気をつけましょう。
また、内臓脂肪が多い人や脂肪肝の人もインスリンの効きが悪くなります。
そのため健康診断などで内臓脂肪が多かったり、脂肪肝と診断されたりした場合は、食生活の改善を行いましょう。
過食や多飲
過食や多飲をしている人も糖尿病のリスクがあります。
特に血糖値を向上させる「糖質」を多く摂取している人は注意が必要です。
糖質が含まれる食べ物を摂りすぎることで、インスリンの働きが追い付かなくなり、インスリン不足となります。
一方で古くなった油やマーガリンやショートニングなどに含まれるトランス脂肪酸など質の悪い脂質が多く含まれる食べ物を食べすぎると肥満となりインスリンの効きが悪くなってしまいます。
そのため、これらを含む食べ物は多く摂りすぎないようにしましょう。
糖質が多く含まれる食ベ物の一例として以下が挙げられます。
【糖質が多い食べ物】
- パン、麺、ご飯
- お菓子
- 甘いジュース
- 果物
【質の悪い脂質が多い食べ物】
- 揚げ物
- お菓子
また、お酒は適量であれば問題ありませんが、果実酒や酎ハイなどの糖分が多く含まれるお酒には注意が必要です。
運動不足
運動不足も糖尿病のリスクを高める原因のひとつです。
運動不足になると体から分泌されるインスリンの効きが悪くなり、血糖値を低下させにくい体になってしまいます。
さらに、エネルギーも消費されないため体重増加にもつながってしまいます。
1日の歩数を増やすだけでも糖尿病のリスクを低下させるのに効果があります。
そのため、日ごろ運動していない人は、意識的に体を動かすようにしましょう。
加齢
先述した通り、2型糖尿病は中高年に多く発症する病気です。
その理由は、加齢に伴い膵臓の機能が低下しインスリンの分泌量が減ったり、脂肪の割合が増えることでインスリンの効きが悪くなったりするためです。
さらに体力の低下やそのほかの病気にかかることで、運動不足となり糖尿病のリスクが高まります。
そのため、できるだけ体を動かしたり、糖質が少ない食べ物を食べたり、筋力を落とさないようタンパク質の多い食べ物を食べたりするなどの予防を行うことが大切です。
まとめ
糖尿病は両親が発症した場合、子どもにも遺伝する可能性があります。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があり遺伝しやすいのは2型糖尿病です。
ただし、遺伝するのは糖尿病という病気自体ではなく、糖尿病になりやすい体質です。
そのため、健康的な生活を送っていれば発症する確率は減ります。
遺伝以外で糖尿病が発症する原因には肥満や過食・多飲、運動不足や加齢などが挙げられます。
これらは、インスリンの作用が低下したり、分泌されにくくなったりする要因となるため、結果的に血糖値が高くなり糖尿病になります。
反対に、家族に糖尿病を発症している人がいても体重や食事、運動などに気をかけていれば、発症リスクは低減することが可能です。
家族に糖尿病を発症している人がいる場合は、この記事を参考に生活環境・生活習慣を改善してみましょう。
監修者情報
医師
田頭 秀悟(たがしら しゅうご)
所属学会
日本東洋医学会 専門医・日本医師会 認定産業医・元日本神経学会神経内科学会 専門医
経歴
鳥取大学医学部卒業。脳神経内科全般(特に認知症、神経難病)の経験を経て、2019年より、内科全般を対象とするオンライン診療専門の「たがしゅうオンラインクリニック」を経営。日本糖質制限医療推進協会提携医療機関としても登録があり、患者自身の病気を治す力を支援する「主体的医療」を理念に掲げ、診療にあたっている。