糖尿病は完治できる?糖尿病=不治の病ではないってホント!?
現代病である生活習慣病の代表が糖尿病です。
糖尿病は生活習慣などが原因の一つとなってあらわれる病気なのですが、この糖尿病になってしまった場合、適切な治療を行うことで完治させることはできるのでしょうか?
こちらのページでは、そんな糖尿病は完治するのかといった疑問にお答えしていきます。
糖尿病ってどんな病気?
糖尿病が完治するのかといった疑問にお答えする前に、まずこの糖尿病と呼ばれる病気がどんなものか簡単に紹介したいと思います。
糖尿病とは、血糖値を下げる作用を持つインスリンの分泌や作用が低下したりすることによって、血糖値が常に高い状態を維持してしまう病気です。
その結果、喉の渇きや尿の回数の増加、体重の減少といった症状があらわれ、症状が悪化することで意識障害などを引き起こすこともあります。
そして、血糖値が高い状態が持続すると、血管の内部から炎症が広がっていってしまい失明や心臓病、腎不全、足の切断といった取り返しのつかない結果につながってしまうことも珍しくありません。
参考元:糖尿病とは
日本人のほとんどが2型糖尿病
現在考えられている分類で、糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病と呼ばれる2種類があります。
1型糖尿病は自己免疫などが原因となって血糖値を下げるインスリンを分泌する細胞が破壊されインスリンの分泌がなくなります。
一方の2型糖尿病は血糖値が高い状態が持続することでインスリンに対する抵抗性が強まったり、インスリンの作用が弱まったりします。
その結果、血糖値が高い状態が続き血管が内部から損傷していき、やがて動脈硬化や心不全といった病気を引き起こしてしまいます。
日本人が発症する糖尿病の9割以上が2型の糖尿病とされており、1型糖尿病は1割にも満たないとされています。
2型として治療されていたが1型だったというケースもあるため、あくまで目安として把握しておきましょう。
糖尿病の治療方法
糖尿病になっても身体的に大きな問題が起きるというケースは少ないものの、症状が進行してしまうと取り替え時のつかないことになってしまいます。
ですから、糖尿病となった場合には速やかに治療を行うことが必要不可欠です。
ここからはそんな糖尿病を治療する時に用いられる治療法について紹介していきます。
食事療法
糖尿病を治療する上で、最初に行うのが食事療法です。
糖尿病は血糖値が高い状態が持続する病気であるため、そもそもの血糖値が上がらないように毎日の摂取するカロリー量を適正に制限したりして正常な数値にすることで改善を目指します。
暴飲暴食や偏った栄養バランスの食事といったような食生活の乱れが糖尿病の要因のひとつとなるため、毎日の食事を見直す必要があります。
また、食事療法ではカロリーなどの栄養バランスを見直すだけでなく、食事の方法(ゆっくりと良く噛んで食べる、朝昼晩と規則正しく食べる、満腹まで食べずに腹八分で抑える)といったような部分にも注意する必要があります。
参考元:糖尿病の食事のはなし(基本編)
運動療法
糖尿病には運動を行う運動療法も非常に有効です。
有酸素運動を行うことによって、筋肉への血流量が増えます。そうして血液を介してブドウ糖が筋肉へと取り込まれて消費されることによって、血糖値は低下していきます。
また、筋力トレーニングなどの無酸素運動も糖尿病の改善には有効です。
無酸素運動によって筋力を鍛えることで筋肉量を増やせばその分だけ、有酸素運動による血糖降下作用をより高めることが可能になります。
ただし、運動すればなんでもよいというわけではありません。
極端に激しい筋力トレーニングなどは血糖値を一時的に高めたり、心臓などへの負担が大きくなってしまうため注意するようにしましょう。
参考元:糖尿病の運動のはなし
薬物療法
糖尿病では上記の食事療法や運動療法を行いながら、血糖値を下げる治療薬を用いた薬物療法が用いられることもあります。
糖尿病の治療に用いられる治療薬としては、血糖値を下げるインスリンの働きを高めるものだったり、糖の排出を促す(尿から)ことで血糖値を下げるものだったり、食事で摂取した糖の分解・吸収を遅らせたりすることで血糖値が急激に上昇するのを抑えるといったものがあります。
この薬物療法は上記に挙げた食事療法や運動療法だけでは血糖値のコントロールが上手くいかないという場合に用いられる治療法になります。
そのため、糖尿病の治療は上記の治療法と合わせて薬物療法を行うのが基本となっており、薬物療法だけを行うというケースはありません。
糖尿病は完治できない!?不治の病なの?
糖尿病になってしまった場合、上記のような治療を受けることで完治させることはできるのでしょうか?
ここからは、糖尿病を完治できるのかどうかといったことについて詳しく紹介していきます。
寛解するケースがある
糖尿病を発症してしまった場合は完治するということはなく、基本的には治療薬を飲み続ける必要があります。
ですが、中には食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせて行うことで、血糖値が正常な値にまで回復し薬物療法が不要になる場合があります。
こうして薬物療法が不要になった状態を寛解と呼びます。
ただし、この寛解は糖尿病が完治したというわけではなく、あくまでも糖尿病の検査値が正常値に戻って症状が改善される状態であり、元の生活に戻れば再び検査値が異常値になってしまうことも珍しくありません。
実は日本人の100人に1人が糖尿病を寛解している
糖尿病は約1%の割合で寛解するとされています。
実際に日本でも糖尿病の寛解に関する研究が行われ、100人あたり1人の割合で糖尿病が寛解したという結果が出ています。
この寛解している糖尿病患者の特徴として、治療開始時に内服薬を使用していないこと、1年間で10%以上BMIが低下していること、糖尿病診断から1年以内であることなどがあげられます。
上記のことから糖尿病を寛解させている人の多くが診断から早期に食事療法や運動療法を開始させ、大幅な体重の減少に成功しているといったことがわかります。
糖尿病の寛解のポイントは?
糖尿病になってしまった場合、完治させるということはできませんがその前の段階である寛解させるということは可能です。
では、糖尿病を寛解させるためにはどういったことがポイントとなるのでしょうか?
ここからは糖尿病を寛解させるための食事療法や運動療法におけるポイントについて、それぞれ詳しく紹介していきたいと思います。
食事療法のポイント:低GI食品を積極的に取り入れる
食事療法を行う上で、血糖値の上昇を避けるために摂取カロリー量を考えて食事するというのは基本となります。
更に、摂取する糖質は低GIと呼ばれる食品を積極的に摂るようにすることがポイントとなっています。
低GIの食品とは食後血糖値の上昇を示す指標である「Glycemic Index」が低い食品を指します。
そのため、低GIの食品は食後の血糖値上昇が緩やかであるため、急激な血糖値の上昇を防げます。
低GI食品としては五穀米や玄米、全粒粉パンや春雨、サツマイモや大豆食品、キノコ類などがあげられます。
参考元:低GI値の食品がおススメ
運動療法のポイント:短時間でも継続的に運動すること
運動療法を行う上でのポイントとしては継続するということがあげられます。
運動は短期的に行ってもそこまで大きな意味はありません。
継続して生活習慣の中に取り入れることで初めて大きな効果を発揮すると考えましょう。
ですから、糖尿病を寛解させるために運動療法を行うという場合は、必ず毎日短時間(10分からでもいい)であっても運動を継続して行うようにしましょう。
また、運動は激し過ぎない(息切れしすぎない)有酸素運動が効果的で、最低でも1回あたり15分以上は行うことがポイントになっています。
参考元:運動療法のポイント
1型糖尿病の場合は寛解が難しい
糖尿病は食事療法や運動療法、薬物療法を組み合わせて適切に対処することで約1%の人は寛解させることができると報告もあります。
ですが、上記のように適切に対処したとしても寛解させることが難しい場合もあります。
その最たるケースというのが、1型糖尿病であるという場合です。
1型糖尿病は自己免疫などが原因となって、血糖値を下げるインスリンを分泌する細胞そのものが破壊されてしまいます。
そうして破壊された細胞が再生したりすることは難しいため、1型糖尿病である場合はインスリン薬剤無しでは、寛解そのものがむずかしくなってしまうのです。
まとめ
ここまで糖尿病の治療法などについて詳しく紹介していきました。
糖尿病は2型である場合は、早期に適切に対処することによって約1%の方が寛解する可能性もあります。
1%というのは非常に低い数値ではありますが治療を行わなければ、動脈硬化や心不全といった命に関わる病気に繋がってしまいます。
そのため、糖尿病の症状などがあらわれた場合には、速やかに医療機関などで正確な検査を受け、糖尿病と診断された場合には、速やかに治療にあたるようにしましょう。
治療を行うことで寛解させられる場合もありますし、寛解させることができなかった場合であっても、より酷い病気に繋がる可能性を防ぐことができます。
監修者情報
医師
井林 雄太(いばやし ゆうた)
所属学会
日本糖尿病内科専門医・日本内分泌内科専門医・日本内科学会認定内科医
経歴
2008年に大分大学医学部を卒業。糖尿病専門外来や、内分泌専門外来に従事しており、糖尿病の臨床や栄養学、アンチエイジング学を専門としている。ミトコンドリアの研究などの論文執筆や国際学会の発表歴を持ち、厚生労働省委託事業である希少疾患ガイドライン作成のチームリーダーなども歴任。また、医師向けの専門書執筆をはじめ、記事執筆/監修、市民公開講座などを行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。