カーボダスに「ダイエット効果」あり?糖尿病治療薬の意外な一面
カーボダスは、ダパグリフロジンを有効成分とする糖尿病治療薬フォシーガのジェネリック医薬品です。
血糖値を効果的に下げる働きによって、糖尿病治療に欠かせない血糖コントロールを成功させる薬ですが、実は「糖尿病が改善されるだけでなくダイエット効果もある」ということで、注目を集めています。
今回のコラムでは、糖尿病治療薬カーボダスのダイエット効果という意外な一面に迫ってみました!
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そもそもカーボダスとは?血糖コントロールを成功に導く仕組み
カーボダスの先発薬であるフォシーガは、2型糖尿病の治療薬として開発されました。
(日本では1型糖尿病の治療にも用いられています)
その薬効は、「糖分の再吸収阻害→尿中に糖分を排出→血糖値を下げる」というものです。
糖分(ブドウ糖)は、腎臓のフィルターを通ると、いったん尿に混ざって排出されそうになりますが、体にとっては貴重なエネルギー源なので、ほとんどは再び血液中に戻って(再吸収されて)しまいます。
この「糖の再吸収」を阻害するのが、カーボダスの役割です。
具体的には、糖の再吸収に関わっているタンパク質SGLT2(ナトリウム・グルコース共役輸送体2)の働きを阻害する作用があります。
糖分の再吸収が阻害されると尿として排出されるため、血糖値が下がってスムーズな血糖コントロールが可能となります。
さらに、いわゆる「糖質制限ダイエット」と同じ理屈で体重が減少していきます。
具体的には、1日あたり60~100gの糖質を排出できるとされています。
糖質は1gあたり4kcalなので、単純計算で1日に240~400kcal落とせることになります。
何キロ落ちる?臨床データで見えてくる体重減少の実績
有効成分のダパグリフロジンについて、1型糖尿病患者を対象とした臨床試験では、以下のような結果が報告されています。
研究・試験名 | 対象 | 期間 | 体重減少 5mg群 | 体重減少 10mg群 |
---|---|---|---|---|
DEPICT-1試験 | 833名 | 合計52週間 | -2.95% | -4.54% |
DEPICT-2試験 | 813名 | 24週間 | -3.21% | -3.74% |
また、以下は2型糖尿病患者を対象とした24の臨床研究を解析した研究の結果をまとめたものです。
研究・試験名 | 対象 | 期間 | 体重減少 5mg群 | 体重減少 10mg群 |
---|---|---|---|---|
Han et al.,2024 | 8,545名 | 12〜104週 | -6.57% | -4.12% |
こうして見ると、多くて7%に近い体重減少が実現することがわかります。
新たに注目されている「心臓・腎臓を守る薬」としての役割
糖尿病治療の副次的効果として体重減少効果もあるカーボダスですが、その有効成分であるダパグリフロジンには、慢性心不全や慢性腎不全を改善する効果もあることがわかっています。
慢性心不全 | 体内の余分な水分とナトリウムを排出することで、心臓への負担を軽減します。 |
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慢性腎不全 | 腎臓の血流や圧力の調整を助け、進行を遅らせる効果が示されています。 |
先発薬フォシーガを用いた臨床試験では、心不全による心血管死や心不全悪化のリスクを26%低下させたという結果が出ています。
また、慢性腎臓病を対象とした臨床試験では、腎機能悪化や末期腎不全、腎死や心血管死のリスクを39%下げたという結果が出ています。
まとめ:カーボダスは“結果的に痩せることがある薬”
ここまで見てきたカーボダスの効果について、あらためてポイントをまとめておきましょう。
- カーボダスには糖分の再吸収を阻害して尿中に排出する作用がある
- 血糖コントロールをサポートしつつ、糖分排出による体重減少効果も見込める
- 心不全や腎不全の改善効果もあることが明らかになっている
ちなみに、糖尿病や心不全、腎不全でない健康な方が「手軽に“糖質制限”ができるダイエット薬」として裏ワザ的に使用するケースも考えられますが、その場合は1回あたりの服用量を5mgに抑え、自己判断で勝手に増やさないことが重要です。